"新幹線の日、父は駅弁を売らなかった" 第11話
夫は吹きした。
「母さんと同じこと言うなよ」
「はもっとに細かかった」
「じゃあ弁当持って乗ればいい」
栄吉はし考えた。
「それなら、まあ」
父の顔に、さな笑みが浮かんだ。
ホームの向こうでは、次の列をらせる放送が流れ始めていた。
昭39。
本が未来へきく踏みした。
の駅弁売りは、誰よりも古いを見送ったあとで、誰より静かにしいへ歩き始めた。
速くむことだけが、へむことではない。
振り返り、別れを告げ、それでももう度歩きす。
そのの栄吉がそうだったように。
翌も、その次のも、さな駅には父の声が響いた。
「弁当、お弁当です――」
刻表は変わった。
列も変わった。
やがて駅も変わっていくだろう。
けれど箱のには、が残した甘い玉子焼きが入っていた。
そして夫は、そのを次の代にも残していこうと決めていた。
もう戻らない列を追いかけるためではない。
その列が運んできた切なものを、これから先へ渡していくために。
幹線業の、田栄吉は午、駅弁を1つも売らなかった。
けれど、そのの午から彼はまた箱を肩にかけた。
昨までとは違う刻表のを、同じ声で歩いた。
そしてその背を見ながら、夫は初めてった。
父が30売ってきたものは、ただ腹を満たす弁当ではなかった。
誰かが旅つ途でにする、さないだった。
そのいだけは、どれほど代が速くなっても、置きりにする必はなかった。