みかん小説
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"日本人に戻れた父、戻れなかった娘" 第10話

美津子は何も言わなかった。

郎はしばらく写真を眺めた。

それから、ゆっくり頷いた。

「そうだな」

その答えを聞いて、美津子は静かに笑った。

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本はきな節目を迎えた。

条約の発効によって、戦つの代が終わり、しい歩みが始まった。

郎にとって、その待ち続けただった。

戦争が終わっても、気持ちのどこかではまだ終わっていなかった。

陸で築いたを失った。

を失った。

と別れた。

持っていた物の半を置いてきた。

本へ戻れば、全てが元に戻るとったわけではない。

それでも、

「帰ってきた」

という言葉だけが、自分を支えていた。

だから講条約が発効した朝、宗郎はからんだ。

「これで俺たちも、ようやくに戻れたようなもんだ」

その言葉は、宗郎自にとっては嘘ではなかった。

だが娘は黙っていた。

美津子にとって、本は「戻ってきた国」ではなかった。

14歳で初めて暮らし始めただった。

父が懐かしがる岡の町に、美津子の幼い頃の記憶はなかった。

祖父のがあると言われても、そこへ帰りたいとったことはなかった。

美津子が帰りたかったのは奉だった。

だった。

だった。

友達のいる町だった。

けれど、その所へ戻ることはできなかった。

父にとっての帰国は、娘にとっての喪失だった。

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同じ族が、同じ来事を、正反対ので受け止めていた。

郎は、そのことに気づかなかった。

自分がなら、娘も同じ気持ちのはずだとっていた。

自分が本へ帰れて嬉しいなら、娘も嬉しいはずだとっていた。

そして娘が、

「ここがなの」

と泣いた、理解できずに頬を叩いた。

それは宗郎にとって、く消えない記憶になった。

方、美津子も父の気持ちを理解していたわけではなかった。

本を「故郷」と呼ぶ父を見るたび、自分の奉での活を否定されているとじていた。

けれど父が押し入れの奥に写真を残していたことをった。

の写真。

の写真。

幼い娘の写真。

「昔のことは忘れろ」

と言っていた父自が、忘れられずにいた。

郎もまた、失ったを抱えてきていたのだ。

ただ、その喪失を認めることが怖かった。

本へ戻れたのだから幸せだとわなければならない。

そううことで、自分を支えていた。

父と娘のにあった溝は、どちらかが違っていたからまれたわけではなかった。

同じ「故郷」という言葉に、別々の所をい浮かべていたからだった。

美津子は修と結婚し、岡庭を作った。

いつのにか、最初はらない町だった所に、自分の活が積みなっていった。

働いた郵便局。

と歩いた

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娘がまれた

それらは、奉の記憶を消すものではなかった。

しい記憶が増えたからといって、古い記憶を捨てる必はなかった。

娘から、

「故郷?」

と聞かれた、美津子は初めて迷わず答えられた。

「お母ちゃんの故郷のつ」

それは、20歳の頃には言えなかった言葉だった。

昔の美津子は、つを選ばなければならないとっていた。

を故郷と呼べば、ではないとわれる。

を故郷と呼べば、13の自分を裏切るようにじる。

どちらかを選ばなければ、自分の居所がなくなるとっていた。

だが、本当はそうではなかった。

国はつでも、に残る所はつとは限らない。

帰れない所を故郷と呼んでもいい。

から暮らし始めた所を、をかけて故郷にしてもいい。

どちらも自分の部として持っていていい。

それを最初に認めてくれたのは、修だった。

「美津子が子どもの頃にんでた町なら、りたい」

その言葉によって、美津子は初めて、奉を歴史のとしてではなく、自分の部として話すことができた。

そして最には父も認めた。

「故郷かどうかは、おが決めろ」

その言葉を聞いた、美津子はようやく、自分のを誰かに説する必がなくなったようにじた。

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ラジオので父はんだ。

娘は黙っていた。

同じニュースを聞いていたのに、見ていた景は違っていた。

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