"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第15話
息子が選んだ側
尚弥の答えを聞いても、議と涙はなかった。正10、の部座席に空いていた所を見たから、私はどこかで分かっていたのかもしれない。
「そう。あなたが選ぶ側は、よく分かりました」
「選ぶとか、そういう話じゃない。母さんが急にカードや塾代を止めたから、みんな困ってるんだ。せめて落ち着くまで元に戻してくれ」
私は通帳からまとめた支払覧をした。直1、追加カードの利用は平均8万4000円。美咲の塾代は5万円で、わせて160万円を超える。費や検代を含めれば、5で私が負担した活費は約620万円になっていた。
覧には、翔太の修学旅用品3万8000円、美咲の期講習9万6000円、昨の検14万円も並んでいる。頼まれるたび、「子どもたちのためだから」と自分に言い聞かせた。けれど、平均8万4000円も使っていた追加カードが焼肉で止まった、尚弥たちが最初に配したのは、私ではなく支払いだった。
「この620万円は、同居に私が自分で払った活費として返還を求めません。孫たちへ使ったことも悔していません。でも、嘘をついて受け取った1200万円と、勝に売ろうとした1860万円は別です」
「同じで暮らしてきたのに、、って。そんなにが事なのかよ」
「事なのは、をどう受け取ったかです」
私が答えると、尚弥は言葉を詰まらせた。
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母親が族へを使うことと、族が母親を騙してを取ることは同じではない。額が1万円でも1200万円でも、その境界は変わらない。
恵理は声をしらげ、今度は孫の名をした。
「翔太の受験を台無しにするつもりですか。美咲だって、おばあちゃんに捨てられたとったら傷つきますよ」
「子どもたちを交渉に使わないで。私は2との連絡を絶ちません。でも、あなたたちの活費を払うこともしません」
美咲が守ってくれた2つのお玉袋が脳裏に浮かんだ。孫を切にうからこそ、が嘘をつけば誰かの財産を奪ってもよいという姿を、族の普通にはしたくなかった。
「ほら、結局自分のことしか考えてないじゃない!」
恵理がちがった拍子に、座布団がろへ滑った。も続いて腰を浮かせ、は私のにある封筒へを伸ばした。
「その資料を渡しなさい。会社の内部に関わるものだ」
「私の振込記録と、私宛ての請求です」
は封筒の端をつかみ、力任せに引いた。茶ぶ台が揺れ、5つの湯みのうち1つが倒れる。めたほうじ茶が畳へ広がり、い類ので止まった。
尚弥は「お義父さん」と呼んだものの、ちがって止めようとはしなかった。正10ののと同じだった。自分でをさなくても、黙って見ていれば望んだ結果がに入るとっている。
「弁護士に入れ恵されたくらいで、自分が勝ったとうな。族の会話をで言いふらせば、こちらも名誉を傷つけられたとしてくぞ」
「今の話は、言いふらす必がありません」
私はのから目をさず、帯の横に置いたさな送信ボタンを押した。
「必なが、最初から聞ける形にしてありますから」
が眉を寄せた。その、茶ぶ台の裏でさな赤いランプがっていることに恵理が気づいた。
「まさか、録音してるの?」
恵理がを伸ばした瞬、玄関の呼び鈴が鳴った。続けて、廊から落ち着いた男の声が聞こえる。
「林さん、佐藤です。図を確認しました」
私はの指から封筒をし、ちがった。
「私の代理です。ここからは、佐藤弁護士にも聞いていただきます」