"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第13話
1200万円をっていた息子
私が振込記録を置くと、隆の線が瞬だけへいた。そこには、彼が持ってきた黒い鞄がある。恵理もも黙り込み、6畳のには壁計の音だけが残った。
「5の33、私は尚弥ののとして1200万円を振り込みました。けれど、受取座は株式会社桜産。購入代には1円も使われていません。何の代だったのですか」
は数秒遅れてを鳴らした。
「請求にいてあるでしょう。宅取得支援業務の報酬です。探しや融資の相談に乗ってやった」
私は、売買価格4680万円の契約と宅ローンの精算を横に並べた。仲介会社の欄にあるのは京の産会社で、桜産の名はどこにもない。
「では、業務委託契約、報告、見積を見せてください。1200万円分、何をしたのか分かる資料もお願いします」
「5もの資料が、全部残っているとうのか」
「産会社が受け取った1200万円の根拠です。私の方には、振込記録も請求も残っています」
は答えず、湯みにをつけた。がめていることに気づくと、苛ったように茶ぶ台へ戻した。
私は尚弥へ向き直った。
「あなたは、宅ローンが4680万円全額だったとっていたのね」
尚弥の喉がした。契約者本が借入額をらなかったとは言えない。
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しばらく俯いた、彼は絞りすように答えた。
「義父さんの会社が、あの頃し厳しかったんだ。1200万円は度だけ会社へ回して、半には返すと聞いていた」
胸の奥で、最まで残っていた細い糸が切れた。息子はのき先をらなかったのではない。に使うと私へ説しながら、最初から別の目へ回すことをっていたのだ。
振込を終えたの夕方、尚弥は寿司を買って帰り、「これで々の返済が軽くなる」と笑っていた。半だけ貸すとも、桜産が苦しいとも、言も聞いていない。私は祝いだとってけた寿司桶のまで覚えていた。
「半に返ってこなかった、なぜ私に話さなかったの?」
「経営が落ち着くまで待ってくれと言われた。それに、いずれ俺たちのに使うだったんだから、急がなくても同じだとって……」
「同じではありません。私は、あなたの借を1200万円減らすために渡したのよ」
恵理が耐えきれなくなったように声をげた。
「父の会社が潰れたら、私たちだって困ったんです。お義母さんには預があったし、族を助けるのは当然でしょう!」
「恵理、黙れ」
がく制したが、もう遅かった。私は恵理の言葉を急いで拾わず、本が続きを話すのを待った。
「あの1200万円がなかったら、父の会社は支払ににわなかった。
ちゃんと会社をて直したんだから、結果には誰も損していません」
「私は1200万円を失っています」
恵理は唇を結んだ。は娘を睨みつけ、は帯ので落ち着かなく指をかしている。
「つまり、という説は嘘で、桜産の支払いに使った。そのも返さず、実態のない請求を作って報酬に変えた。そういうことですね」
は確に認めなかった。しかし、否定もしなかった。
尚弥は両を畳につき、私へしを寄せた。
「母さん、悪かった。でも、あのは仕方なかったんだ。族なんだから、分かってくれ」
私は茶ぶ台ので固くなった指をいた。
「あなたの言う族に、私は入っていたの?」