"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第9話
6畳の迎え撃ち
曜までの6、私は佐藤弁護士と何度も打ちわせをねた。証拠は相を鳴り負かすためではなく、嘘をつくたびに逃げを1つずつ塞ぐ順番です。それが佐藤の方針だった。
最初は判断能力を示す診療記録。次に、しない青葉メンタルクリニックの見。そして、田のマンションの登記事項証、偽造された委任状、恵理のメッセージ。1200万円に関する資料は、最まで見せないことにした。
「尚弥さんがどこまでっていたか、本の言葉で確認してください。ただし、危険をじたらすぐに話を打ち切ること。警察への相談受付番号も元に置いておきましょう」
佐藤は私がに任せて問い詰めないよう、質問もにしてくれた。《誰が》《いつ》《何を決めたか》。答えが曖昧なら言い換えて助けず、そのまま次の資料へむ。私は3度読み返し、震えそうになる指で鉛を持って、聞く順番にさな番号を振った。
「全部を度に見せる必はありません。相が自分ので事実と違う説をした、その部分を否定する資料だけをしてください」
息子を相に、そんな準備をしなければならないことがしかった。それでも、5の私は約束を信じて1200万円を渡し、証拠を残さなかった。同じ違いだけは、もう繰り返せない。
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佐藤は同じマンションの1階にある管理で待し、私から図があれば部へ来ることになった。管理にも来客が4いると伝え、玄関脇の非常ボタンが使えることを確認した。げさに見えても、実印を持ち帰るまで帰らないと言っている相を、私ひとりで無防備に迎えるつもりはなかった。
の夕方、私は駅の量販でさなボイスレコーダーを買った。説を読み、茶ぶ台の裏に固定して録音を試す。
「117。林子、68歳」
再すると、自分でも驚くほど落ち着いた声が聞こえた。5、夫のにひとりになるのが怖くて、尚弥の言葉にすがった女の声とは違っていた。
録音を止めると、急に部が静かになった。蔵庫のい音と、壁計の秒針だけが聞こえる。怖くないわけではない。けれど、怖いから従う活へ戻る方が、今はもっと恐ろしかった。
当の朝、私はく起き、6畳のを丁寧に掃除した。夫の葬儀で着た黒い着物に袖を通し、帯を締めると自然に背筋が伸びた。押し入れから来客用の座布団を4枚し、茶ぶ台には5つの湯みを並べた。
京ので私に与えられていたのは、100円ショップで買った軽い脂製のコップだった。今は、夫との結婚祝いにもらった磁の湯みで客として迎える。族だから何をしても許されるという関係を、私はもう終わらせたのだ。
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午958分、窓のに黒い型が止まった。スーツ姿の尚弥、ブランド物のコートを着た恵理、そして恵理の両親がりてくる。隆は古いマンションを見げ、値踏みするように元をゆがめた。
エントランスの自ドアがく音、4分の靴音、エレベーターの到着を告げる子音が順にづいてくる。私は帯のでゆっくり息を吐き、非常ボタンまでの距をもう度目で確かめた。
私はレコーダーのスイッチを入れ、証拠の入った4つの封筒を座布団の横へ置いた。
午10ちょうど、玄関が3回、乱暴に叩かれた。
「母さん、迎えに来た。けてくれ」
鍵をけると、恵理の母・は私の着物姿を見てく笑った。
「まあ。施設へくだけなのに、そんな格好までして」
私は何も言い返さず、4全員が部へ入ったのを確認してから、静かに玄関の鍵を閉めた。