"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第5話
がない
宅購入の精算には、と建物をわせた売買価格として4680万円と記載されていた。私は老鏡をかけ直し、佐藤弁護士が指し示した数字を目で追った。
「こちらがから実された宅ローンです。額は同じ4680万円。諸費用を除く購入代は、全額この融資で支払われています」
精算の欄は空だった。私が振り込んだ1200万円は、どこにも記載されていない。
もし約束通りに充てられていれば、借入額は3480万円になるはずだった。ところが返済予定表には、4680万円を35かけて返す計画が組まれている。契約当38歳だった尚弥は、73歳になるまで支払いを続ける計算だった。
5、尚弥は何度も私に説した。1200万円を先に入れれば借入額が減り、毎の返済が楽になる。私も緒にむのだから、族全員のためのになるのだと。夫と暮らしたを売った、庭の梅のを最に振り返った景まで、今もはっきり覚えている。
の窓で振込用をいた、1200万円という数字にが震えた。尚弥は私の隣で、「父さんが残してくれたを無駄にはしない」とをげた。その言葉を信じたから、私は振込の残を見ても悔しなかった。あのの息子の声まで嘘だったのかとうと、胸の奥が鈍く痛んだ。
「資料に載っていないだけで、別の形で宅会社へ支払われた能性はありませんか」
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自分でも苦しい問いだと分かっていた。それでも、息子が最初から私を騙していたとはいたくなかった。
佐藤は首を横に振らず、を交えない声で答えた。
「その能性も含めて調べます。ただ、現点で言えるのは、1200万円がの購入代として処理されていないということです。振込先の名義と、当発された類を照する必があります」
私はスマートフォンに保した写真をいた。京のをる直、居の類棚で撮したものだ。宅会社の契約、融資実の細、恵理が管理していた封筒。そのに、「宅取得支援業務」とかれた古い請求が1枚だけ混じっていた。
額は1200万円。だが、具体な業務内容も担当者名もなく、受領印だけが押されている。
請求の面には、現調査、契約交渉、融資支援といった項目さえなかった。あるのはの名目と額だけで、領収や成果物を示す資料も見当たらない。族の贈与として処理したのではなく、わざわざ会社の業務に見せかけていたことが、かえって自然だった。
「宅取得の相談だけで1200万円なんて、あり得るんでしょうか」
「通常の仲介数料や続費用とは考えにくい額です。しかも、この会社は売買契約の仲介業者ではありません」
佐藤の声がくなった。司法士が取得した登記事項証にも、その会社が取引へ関与した記録はない。
私は請求の写真を拡したが、受領印の社名だけはになって読めなかった。
その、尚弥から留守番話が入った。再すると、疲れと苛ちの混じった声が事務所に流れた。
「母さん、施設の話は度やめる。だから通帳と実印を返してくれ。義父さんの会社にも迷惑がかかってるんだ。帰ってくれば、1200万円のこともちゃんと説するから」
なぜ、私が尚弥に渡したはずので、恵理の父親の会社が困るのか。
佐藤は音声を保し、机のの精算を私のへ置いた。
「林さん。なくとも、このを買うために、あなたの1200万円は1円も使われていません」