"「ただの用務員でしょ?」卒業式で笑われた72歳――アルバムを開いた生徒たちが泣き、校長は壇上を降りた" 第7話
救うのではなく、つなぐ
井奈緒は佐藤の隣につと、保護者席へ向き直った。
「私は13、この学の3でした」
現31歳の奈緒は、当、学受験を目に控えながら教へ入れなくなっていた。父親が失職し、学を諦めて働くべきか悩んでいたが、友にも教師にも相談できなかった。
奈緒は度、指導のまでったことがあった。だが、扉の向こうからの徒のるい声が聞こえ、自分だけが庭の事で学を迷っていることをられるのが怖くなった。結局ノックできず、旧舎へ逃げ込んだのだ。
ある朝、使用されていない旧舎の階段で座り込んでいるところを、球交換に来た佐藤に見つかった。
「佐藤さんは『私が何とかする』とは言いませんでした。『今の決断を1でしなくていい』と言って、養護教諭を呼びました」
奨学制度を説したのは指導部で、族と話しったのは担任だった。佐藤はその、学先を尋ねることさえしなかった。それでも奈緒は学へみ、理学を学んだ。数、この学のスクールカウンセラーとして戻ってきた。
着任初、奈緒が礼を言うと、佐藤は彼女の過を覚えていないふりをした。徒だった頃の事を、現の同僚関係へ持ち込まないためだった。奈緒が「あののことを隠さなくて丈夫です」
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と伝えて、ようやく「よく戻ってきたな」と笑った。
「戻って初めて、佐藤さんが同じようにくの徒をつないできたことをりました。ただし、昔は連絡だけで終わることもありました。そこで学は12から、異変を発見した刻、引き継いだ教職員、対応完の確認だけを記録する仕組みに変えました」
奈緒が掲げたファイルに、相談内容や庭事はかれていない。記録を閲覧できるのも、養護教諭、スクールカウンセラーなどに限定されている。
さらに7からは、佐藤を含む内スタッフ全員が、に2回の徒対応研修を受けていた。どこまで聞き、どの段階で専職へつなぎ、緊急は誰に連絡するか。善だけに依しないための順だった。
「佐藤さんは、徒と密で話しません。個な連絡先も交換しません。秘密を守ると約束して抱え込むこともしません。助けるではなく、助けにつなぐであり続けました」
佳代はファイルを見つめ、ゆっくりと座った。職務範囲を問題にした自分の問いには、ではなく記録と制度で答えが示された。それでも、胸の奥に引っかかるものがある。
美羽が学からへがって以来、佳代は学事のたびに佐藤を見かけていた。だが名を覚えたのは、卒業アルバムへの掲載に反対したが初めてだった。
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娘が毎朝どんな顔でそのを通っていたのかなど、考えたこともない。
壇から戻った美羽が、先ほどから奈緒を見ていた。
母には言えない。そう頼んだのことを、美羽は鮮に覚えている。だが、このまま黙っていれば、母は佐藤が誰の顔を見てきたのか、最まで理解できないかもしれない。
美羽は卒業アルバムを子に置いた。
歩踏みすと、隣の徒が驚いて顔をげた。佳代も娘のきに気づき、答辞で何か失敗したのかとそうに眉を寄せる。
美羽は奈緒のまで歩き、さく息を吸った。
「井先。私の記録について、話しても構いません」
奈緒はすぐにはうなずかなかった。
「美羽さん、本当にいいの? 卒業式だからといって、話す必はありません」
「はい。私が自分で話します」
佳代の顔から、初めて余裕が消えた。
「美羽? 何の話をしているの?」
娘は母を見たが、答えなかった。
美羽もまた、佐藤が専職へつないだ徒の1だった。