"「ただの用務員でしょ?」卒業式で笑われた72歳――アルバムを開いた生徒たちが泣き、校長は壇上を降りた" 第6話
127通の
最初のは、23の消印が押された便箋だった。
は、本から公の許を得た部分だけを読みげた。
「1の、私は言葉がうまくず、教で笑われるのが怖くて、毎朝遅刻していました。佐藤さんは理由を聞かず、私がを通るたび『今も来たな』と言ってくれました。卒業、私は言語聴覚士になりました」
スクリーンが切り替わり、40歳ほどの男性が映った。病院の名札を胸につけ、穏やかに笑っている。
『あの言葉がなければ、私は「話すこと」を仕事にしようとはわなかったでしょう』
次は16のだった。
母親の介護で朝の支度がにわず、週に何度も遅刻していた女子徒。怠けていると決めつけられ、指導へ呼ばれる直、佐藤が彼女の制から毎朝同じ消毒液の匂いがすることに気づいた。
佐藤は事を聞きそうとはせず、養護教諭に「し疲れているようです」とだけ伝えた。そこから庭状況が分かり、学は遅刻の扱いと学習を調した。
『私は今、介護福祉士として働いています。助けてくれたことより、皆ので事を暴かなかったことに謝しています』
佳代は線を伏せた。自分なら、規則どおり遅刻の理由を説させる。それが公平だとってきた。しかし、説をいることで傷つく子供がいることまで考えたことはなかった。
広告
3通目は8。部活の会で失敗し、退部届を持って舎裏に座っていた徒からだった。
4通目は4。弁当を持ってこられないが続いても「欲がない」とごまかしていた徒。
どのにも共通していたのは、佐藤がい説教をしていないことだった。名を呼ぶ、濡れた袖に気づく、同じ所に3続けている理由を考える。そして必なへ渡す。本にとっては数分のでも、徒には「消えても誰も困らない」といういを止める数分になっていた。
5通目は今届いたばかりで、差は青蓮だった。
「卒業できたら渡そうとって、先きました」
蓮が照れたようにうつむくと、張りつめていた会にさな笑いが起こった。
はを箱へ戻した。
「ここにある127通は、佐藤さんが助けた数のすべてではありません。をかなかったも、今も誰にも話していないもいるでしょう。反対に、佐藤さん1で解決した事例は1件もありません」
養護教諭、担任、学主任、スクールカウンセラー。必に応じて児童相談所や医療関へつないだ例もある。佐藤は最初の変化を見つけ、助けを求めるところまで付き添った。それが記録に残る彼の役割だった。
会方から拍が起こった。1、また1とちがり、やがて180の卒業全員が佐藤へ体を向けた。
広告
佐藤は何度もをげたが、途から顔をげられなくなった。作業を目元へ当て、肩をさく震わせている。
美羽は最列で拍をしながら、佐藤が毎朝持っていたほうきの柄をいした。自分が何も話せないは、佐藤も何も聞かなかった。ただ同じ刻に同じ所を掃き、美羽がを越えられるまで背を向けていてくれた。
その記憶を、佳代はらない。娘が欠席も遅刻もせず、予定どおり卒業代表になった結果だけを見ていた。
その姿を見ても、佳代には1つだけ確かめなければならないことが残っていた。
彼女はちがった。
「謝されていることは分かりました。ですが、徒の秘密をるを、学は本当に30、善だけに任せていたのですか?」
拍が止まった。
すると、スクールカウンセラーの井奈緒が、い記録ファイルを持ってへた。
「いいえ。この30で、仕組みも変わりました。その仕組みがえられた経緯をる元徒として、私から説します」