"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第15話
午213分の部
健と玲奈の活に亀裂が入り始めた方、をたの由美は、以のからで30分ほどれた町の2DKでの夜を迎えていた。
築数は古かったが、向きの窓から午のが入り、台所には分の器を置くのに分な棚があった。5つの段ボール箱をけても部はがらんとしており、その静けさが最初は落ち着かなかった。
引っ越した初の夜、由美は午11に布団へ入った。めの敷布団が背に当たり、くをるの音がかすかに聞こえる。それでも、誰かの呼吸や咳にを澄まさなくてよいとうと、すぐに眠りへ落ちた。
目をけた、枕元の計は午213分を示していた。
の体位を変えるだった。由美は反射に起きがり、暗い部のでを伸ばした。介護ベッドの柵も、吸シートを入れた籠もない。聞こえた気がした呼び声は、蔵庫のい作音へ変わった。
もう起きなくていい。誰かに呼ばれてもいない。
そう理解した途端、7張りつめていたものが緩み、涙が頬を伝った。しいのか、したのか、自分でも分からない。由美は膝を抱え、静まり返った部でしばらく泣いた。
朝7、目覚まし計が鳴った。トーストを1枚焼き、コーヒーを淹れても、朝の支度はすぐに終わった。の着替えも、朝の介助も、洗濯物の確認もない。
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余ったをにして、由美は自分が何をしたいのかさえ、すぐにはいせなかった。
午、以の職で緒だった佐子へ話をかけた。
「ブランクが7もあるんだけど、週に2か3、経理の仕事はないかしら」
佐子は驚いたあと、るい声で言った。
『ちょうど補助を探してる会社があるの。しい会計ソフトを覚える気があるなら、聞いてみるわ』
数、由美は紺のジャケットを着て面接へ向かった。履歴の7を尋ねられると、介護のために退職したこと、計と医療費を管理しながら復職の会を待っていたことを、隠さず説した。
それは空ではなかった。なくとも、もう自分までそう呼ぶ必はないとえた。
採用の連絡は、面接から3に届いた。週3、午9から午4まで。由美は引きしの奥から昔使っていた卓をし、しいノートの最初のページに勤務始をいた。
初勤の、端末へ入力するはったより緊張した。勘定科目の覧も画面の配置も以とは違う。だが、取引先別の入表に1万8000円のずれを見つけ、元の請求までたどると、隣の席の社員が「助かりました」と笑った。
帰りにさなへ寄り、いガーベラを3本買った。誰かの誕でも記でもない。自分で働いて得る予定のから、自分の部に飾りたいものを選んだ。
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それだけのことが、由美にはしかった。
それから数かが過ぎる頃には、健と玲奈は別居していた。健は何度も玲奈の実へを運んだが、彼女が求めたのは謝罪ではなく、財産と活費を理する話しいだった。
「母のことは施設に任せている。もう君に頼むことはない」
健はそう説得したが、玲奈は首を横に振った。
「介護だけの話じゃない。事も洗濯も、私が断ると嫌になる。あなたが欲しかったのはしい妻じゃなくて、由美さんの代わりでしょう」
その言葉を否定しようとして、健は何も言えなくなった。
再婚から11か、は婚届を提した。
共通のからその話を聞いた、由美は会社の湯で自分のコーヒーを淹れていた。驚きはしたが、胸の奥に待ち望んだようなびは湧かなかった。
健の結婚が続こうと終わろうと、それはもう由美の活を決める来事ではない。
席へ戻ると、画面には照途の数字が並んでいた。由美は卓へ指を置き、途だった仕事を再した。