"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第14話
「族なんだから」の矛先
の期入居先を決めるまで、3週かかった。
健はと2か所を見学し、自は体調のよいに1か所へを運んだ。最終に選んだのは、古いからで40分ほどの宅にある介護付き料老ホームだった。豪華ではないが、廊はるく、入れされたさな庭が堂から見えた。
は職員に、夜の見回り回数、体位交換、リハビリの頻度をつずつ尋ねた。健はその横で類へ目を通しながら、母が何をにい、どんな介助を必としているのかを初めてった。
入居が決まると、類への記名、用品の補充、病院からの診療報の受け取り、役所での保険関係の確認が続いた。由美が残した介護ファイルがなければ、薬の変更期さえ答えられなかった。
ファイルの余には、由美のさな字で〈肩のにいタオル〉〈分は度にく勧めない〉とかれていた。健は自分の母のことなのに、そのどちらもらなかった。職員へ説するたび、由美の字を読みげているだけの自分が恥ずかしくなった。
ある曜の朝、健は居で類を広げた。
「今は施設で担当者会議がある。玲奈も来てくれないか。今の連絡方法を決めるらしい」
鏡ので髪をえていた玲奈は、振り返りもしなかった。
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「私は友達とランチよ」
「1だけでいい。族なんだから、顔ぐらいしてくれてもいいだろ」
その瞬、玲奈のが止まった。ゆっくり健を見た目には、りより呆れが浮かんでいた。
「その『族なんだから』って言葉、由美さんにも使ったんでしょうね」
「今は由美の話をしてない」
「同じ話よ。あなたは面倒なことを女に渡すだけ、族を持ちすの」
玲奈はバッグを肩に掛け、そのまま玄関へ向かった。健が「妻なんだからしくらい」と追いかけると、彼女は靴を履きながら振り返った。
「私は介護をしない。それを条件に結婚したの。あなたも承した。約束を変えるなら、私もこの結婚を考え直す」
扉が閉まったあと、健はで施設へ向かった。
会議では、の夜の体位交換、事量、通院予定が報告された。職員は本の希望を確認し、は必な部分だけ補した。健の署名が求められたのは、緊急の連絡先と、族へ説した記録だけだった。
誰かが鳴ることも、無理な求をすることもない。それでも健は、40分の面談だけでひどく疲れた。由美はこれに加え、毎の事、排泄、洗濯、夜の介助を7続けていたのだ。
帰宅すると、流しには朝の器が残り、洗濯のでは濡れた類が固まっていた。蔵庫に夕はなく、玲奈からは〈今は実に泊まります〉とだけ届いていた。
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健は凍庫からご飯をしたものの、解凍も分からず、袋の表示を何度も読み返した。ようやく温めた頃には表面がくなり、噌汁を作る気力も残っていなかった。
翌週も、その次の週も、さな衝突が続いた。活費をどちらがく払うか、誰が掃除をするか、の物を誰が届けるか。健が「妻なら支えてくれてもいいだろ」と言うたび、玲奈の表から温度が消えていった。
結婚から4か目、玲奈は寝のクローゼットからきなスーツケースをした。
「し距を置きたいの」
「たかが母さんのことで、そこまでするのか」
「お義母さんのことじゃない。あなたが、誰かが自分の世話をして当然だとっていることが無理なの」
玄関に残された健の元には、施設へ届けるの類が入った袋があった。
かつて由美が毎週黙って持ちげていたさを、健は今、で持つしかなかった。