"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第10話
婚初に崩れた約束
健はすぐに答えられなかった。
「はっきり聞いたわけじゃない。でも、婚したあとも3ここに残って、母さんの世話をしてたんだ。普通は、この先も続けるとうだろ」
「ったんじゃなくて、あなたが私に言ったのよ」
玲奈の声が鋭くなった。
結婚、玲奈は何度もを押していた。健とは結婚したいが、寝たきりの母親を介護するために仕事を辞めるつもりはない。それが条件だった。
玲奈にも自分の仕事と活があった。平は帰宅が20を過ぎることもあり、休には友とかけたい。健はそんな彼女に理解ある顔をして、「君のを介護で潰すつもりはない」とまで言っていた。
玲奈がしたのは、健が自分で母親を支えるとったからではない。すでに7介護している由美が、婚も変わらずへ来ると説されたからだった。
健はそのたびに、「配するな。介護は由美が今までどおりやる。君には絶対に負担をかけない」と答えていた。
「婚した元妻が、毎このへ来て介護する。あなたは本気でそうってたの?」
「由美は母さんにがある。7もやってきたんだぞ。急に放りすなんてできない」
玲奈の目から、婚のびが完全に消えた。
「それを“放りす”って言うの? 自分のに戻っただけでしょう」
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玲奈の言葉には、自分もいずれ同じように扱われるのではないかという警戒が混じっていた。健にとって妻とは、のでりない役割を埋めるなのかもしれない。由美が消えた今、その空いた所へ押し込まれるのは自分だった。
健は苛ち、由美へ話をかけた。呼びし音は続いたが、応答はない。続けて送ったメッセージにも既読はつかなかった。
〈母さんをどこへ連れていった。すぐ連絡しろ〉
もう1通、〈勝なことをするな〉と打ちかけたところで、玲奈が健のからスマートフォンを取りげた。
「勝なのはどっち? 婚した相の予定もも、まだ自分が決められるとってるの?」
健は言い返そうとしたが、由美のしい所も、今どこで働くつもりなのかもらないことに気づいた。妻がをる準備をしていた数週、自分は度も尋ねていなかった。
命令する文面を見て、玲奈はたく笑った。
「まだ自分の妻に話してるつもり?」
「じゃあ、誰が母さんのことをやるんだよ」
「あなたでしょう。実の息子なんだから」
それは、由美が1かに投げかけたのと同じ問いだった。健はあのと同じように答えられない。
夕方になっても卓には何も並ばなかった。健が蔵庫をけると、調料としか残っていない。由美が毎週作っていた介護も、自分の弁当のおかずも、凍庫の分け容器まできれいになくなっていた。
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「何か作ってくれないか」
わずにすると、玲奈はコートも脱がずに振り返った。
「私、介護もしないけど、由美さんの代わりになるために結婚したわけでもないから」
玲奈はそのまま寝へき、ホテルから持ち帰った自分の荷物だけをまとめ直した。今夜すぐていくつもりはない。だが、健の言葉を信じて活用品を運び込む気にもなれなかった。
2はコンビニの弁当を買い、ホテルから持ち帰ったワインには触れなかった。赤いボトルだけが、えた卓の央にっている。
夜遅く、健のスマートフォンにからメールが届いた。面談候補は3つ。どれも平の昼だった。
〈今の介護計画、緊急の連絡、期入居先について、ご族との確認が必です〉
健は画面を玲奈へ見せた。
「緒に来てくれないか」
玲奈は度も画面を見ずに答えた。
「最初に言ったはずよ。私は介護をしないって」
その夜、結婚してまだ2目の夫婦は、別々の部で眠った。