"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第9話
でかれた
と由美がをたその、健と玲奈は役所で婚姻届を提し、都内のホテルへ向かった。
レストランではコース料理を頼み、部へ戻るに、玲奈が指輪を見せる写真を何枚も撮った。健は赤ワインを注文し、「これでやっと自由になれた」とグラスを掲げた。
26の結婚が終わってから、まだ3しか経っていない。それでも健には、ろめたさより解放のほうがきかった。母親の介護は由美が続け、しい妻との活には持ち込まない。事も当面は由美がへ来たに済ませるだろうと、都のよい未来を疑っていなかった。
「お義母さんには、私たちのことをどう説したの?」
玲奈が尋ねても、健は気にする様子がなかった。
「由美が話してくれてるよ。あいつは、そういう面倒なことを黙って片づける女だから」
玲奈はそうにしたが、それ以は聞かなかった。由美が介護を続けるという健の言葉を信じなければ、この結婚そのものを決められなかったからだ。
翌の昼過ぎ、2は束とホテルから持ち帰ったワインをにへ戻った。
玲奈は玄関へ入る、が落ちていないかスマートフォンの画面で確かめた。と正式に顔をわせるのは、しい妻としてこれが初めてだった。だが健は、「母さんは寝たきりだし、由美が横にいるから挨拶だけでいい」
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と軽く言った。
玄関に由美のスニーカーはなく、蔵庫には作り置きの料理もない。の部からは介護ベッドも子も消え、畳のに角い跡だけが残っていた。
健は浴とトイレを見て回り、庭へ通じる窓までけた。母親を子で連れすには誰かのが必なはずだ。それなのに、いつ、誰が、どこへ移したのか、自分だけが何もらない。のを歩く音がきく響くほど、健のきは慌ただしくなった。
卓に置かれたい封筒を見つけた健は、「健へ」という母の字を確かめ、乱暴に封を切った。
〈私は自分のでショートステイへ移りました。由美さんに無理やり連れていかれたのではありません。さんと何度も相談し、私が自分で決めました〉
読みめるほど、健の顔から血の気が引いていく。
〈これからは私のと、私が持っている約2200万円の貯を、私自の介護のために使います〉
「2200万円を……施設に?」
健のから、わず声が漏れた。その反応を、玲奈は隣で見逃さなかった。
母の方より先に額へ反応した。その事実に気づいても、健は言葉を引っ込められなかった。2200万円は、母がくなったあと自分に残るだと、いつからか決めつけていた。減らさないために由美がで介護する。それが最も理だと考えていたのである。
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の最には、それまでよりひときわきな文字があった。何度もペンを止めたのか、ところどころインクが濃くにじんでいる。
〈由美さんを、もうあなたの無料の介護員にしないでください〉
読み終えた直、健のスマートフォンが鳴った。ケアマネジャーのからだった。
『今の緊急連絡先は、ご子息の健さんで登録してよろしいでしょうか』
「由美はどうしたんですか。あいつが今まで全部やってたでしょう」
『瀬さんはすでに婚されていますので、ご族としての対応をお願いするにはありません』
はさらに、翌週の介護面談へ席するよう求めた。健が仕事を理由に渋ると、都のよい候補をしてほしいと静かに返され、話は切れた。
健のから便箋が落ちた。
にはい束、卓には母の、そして誰も事を作らない空の台所が残った。
その真んで、玲奈がい声で尋ねた。
「由美さんが介護を続けるって、本当に本から聞いたの?」