"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第5話
「貯もそのまま残る」
が帰ったあと、は閉じていた目をゆっくりいた。
「私のおなのにね」
責めるような調ではなかった。それだけに、自分のの最まで息子に決められようとしていたのりが、由美には痛いほど伝わった。
健は以から、施設の話がるたびに同じことを言っていた。
「施設なんて入ったらがかかって仕方ない。母さんの貯なんて、あっというになくなるぞ。で見られるうちは、そのほうが絶対にいい」
由美はそれを、母親の財産を配する息子の言葉だとおうとしてきた。しかし、婚も自分に介護を続けさせようとする健の態度を見た今、別のが浮かんでしまう。
そのの午、由美は斎の掃除をしていた。机のから埃をかぶった古いタブレットがてきたのは、源コードをまとめようとしただった。
数まで族で使っていた端末で、健が種を買い替えてからは放置されていた。処分するか確認しようと充ケーブルにつなぐと、数分、暗かった画面にが戻った。
ロック画面には、同期されたメッセージの通が並んでいる。その番に、見覚えのある名があった。
玲奈。
通欄には、健が送った文章の部まで表示されていた。
〈由美が母さんを見てくれるから、施設代もかからない〉
広告
由美の臓がきく鳴った。画面を閉じるべきだとったが、そのに続く文が目に入った。
〈それに、母さんの貯もそのまま残るしな〉
指先からが消えていった。
玲奈からは、〈本当に元奥さんが介護を続けてくれるの?〉と返っている。
〈ああ。あいつは母さんにがあるから、絶対にれられない。由美はそういう女だから〉
さらに、玲奈が〈私は絶対に介護なんてしないからね〉とを押すと、健は〈分かってる。君にさせるつもりはない〉と答えていた。
そのやり取りの付は、由美がので3晩ほとんど眠れなかった週だった。夜213分に体位を変え、朝5過ぎに着替えさせ、そのまま病院へ連れていった。健は「事な商談がある」と付き添わなかったが、そのの夜には玲奈へ、週末の旅先についてメッセージを送っていた。
由美が必に守っていた活の裏側で、健はすでに次の結婚と母親のの計算をしていた。その2つが同じ画面に並んでいることが、何より残酷だった。
由美はタブレットを伏せた。
メッセージを消すことも、端末を持ちすこともしなかった。古いタブレットを元の机へ戻し、充ケーブルだけをつないだままにした。健が何を考えていたのか、いつか自が確かめたいと言うかもしれない。由美の判断で、その会まで奪うことはできなかった。
広告
7の介護も、仕事を辞めたことも、夜に何度起きたかも、健にとっては母親の施設代と2200万円を守るための段にすぎなかった。由美の責任やへのまで、自分に都よく利用できる性格として数えられていたのだ。
夜、由美はの部へった。タブレットの文章をそのまま見せることはできなかったが、黙っていることもできなかった。
「施設のおのことですが……健さんは、お義母さんの貯を減らしたくないようです」
はしばらく井を見つめた。
「本当に、おは残っているのかしら」
息子を信じたい気持ちと、もう信じられない苦しさが混じった声だった。
「2000万円以あるはずです。正確には、通帳を確認しないと分かりません」
い沈黙のあと、は由美へ顔を向けた。その目から迷いが消えていた。
「使うわ」
「お義母さん……」
「私のおは、私の介護のために私が使う。、に連絡します」