"「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”" 第9話
32秒の嘘
午759分、結は公予約された画面を見つめていた。
内には私と結、佐伯弁護士の3しかいない。客席の照を落としているため、壁に掛かった振り子計の音がいつもよりきく聞こえた。公するのは、元の1分41秒の映像と、拡散された32秒版を並べた画だ。
最初の32秒では、黒川が「異物が入ってるじゃないか」と鳴り、私が「お客さん、おめでとうございます」と答えたところで終わる。その直、消されていた1分9秒が続く。私が柚子の種だと確認し、驚かせたことを謝り、しいそばへ交換する。最には黒川自が納得して箸を取る姿も映っていた。
画のには、佐伯と確認したい説だけを添えた。な反論はかず、撮、元データのさ、編集のさ、そして1800万円の売買契約を迫られた事実を順番に記す。
「公されるよ」
午8、結がさく息を吸った。画面の表示が《予約済み》から《公》へ変わる。
最初の3分は何も起きなかった。私は厨へき、使う予定のないそば釜を布巾で磨いた。待っているだけでは、指先の震えが止まらなかったからだ。
やがて結の携帯話が続けて鳴り始めた。
『全然が違う。なぜ途を切ったの?』
『主は謝って交換までしている』
『32秒だけ見て批判してしまいました。申し訳ありません』
再回数は20分で3000回を超え、1には1万8000回に達した。
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数字が増えるたび、を罵る言葉より、元画を確かめようとするき込みが目つようになった。23件あった自然なコミについても、同じ文面がに投稿されていると気づくが現れた。
午9過ぎ、の固定話が鳴った。声の主は、に予約を取り消した所の女性だった。
「い画だけを信じてしまって、ごめんなさい。交換まで申していたんですね」
私は責める言葉をみ込み、確認してくれたことに礼を言った。話を切ると、また別の常連客から着信が入る。結は受話器の横に、取り消しではなく《再予約》の正の字をき始めた。
方で、「い画のほうをが作ったのではないか」「急に証拠がるのは怪しい」というき込みも残った。佐伯は、原本のファイル報を第者が確認できる形で補し、言い争いには返信しないよう結へ伝えた。反論の数を増やすより、1つの記録を崩れない状態で置いておくほうがい。
それでも、失った信用が晩ですべて戻るわけではない。予約表の消された名も、空の客席で聞いた湯の音も消えない。私はぶ結の隣で、画面を見つめたまま言った。
「これで終わりだとわないほうがいい。追い詰められたは、次の嘘をつくから」
結は頷き、投稿の管理画面からをした。
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画を公するまで、彼女は何度も「これでまで失ったら」とにしていた。その目に今あるのは堵だけではない。自分たちが守る側へ回ったという、静かな覚悟だった。
その予は、218分に当たった。
黒川の会社が公式アカウントで声を発表したのだ。
《当社社員を名乗る物から提供されたとされる映像およびメッセージには、加・改変の疑いがあります。当社および代表者がへ当な求をった事実はありません》
さらに黒川は、翌晩に予定されていた域再発の公説会へ席し、自ら経緯を説すると発表した。
説会はもともと、周辺商へ旗艦計画を説するために予約されていたものだ。商会から私の携帯話へ連絡が入り、「のが計画図に含まれている以、あなたにも発言してほしい」と告げられた。黒川が逃げずに現れるなら、私たちも画面のから反論する必はなかった。
佐伯は声を最まで読むと、静かにパソコンを閉じた。
「向こうが“偽物だ”と言うなら、は原本の所から示せます」
結が、保していた4つの証拠を卓へ並べた。
1分41秒の元画、午217分の防犯映像、社内LINE、そして1800万円の契約。
黒川は、自分からすべての証拠がそろう所へてくることになった。