"「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”" 第8話
3000万円の止め料
翌朝10、弁護士の佐伯耶が柚庵へ来た。
佐伯は私がの相続について相談していた物で、映像と社内LINEを確認すると、すぐから事を聞いた。元の1分41秒の画は会社支端末にも残し、複製データはと作成順を記録したうえで保管する。LINEは画面撮だけでなく、会話のと参加者が分かる形で保した。
「これなら、32秒の画が図にを変えて作られたことを説できます。夜の映像、契約、非通のメッセージも別々の話ではありません」
佐伯が4つの資料を卓に並べると、点だった来事が1本につながった。
はさらに、発計画の社内資料を差しした。柚庵のについて、会社が最初に確保していた取得予算は7000万円。黒川はその数字を部に隠し、私には1800万円を提示していた。
こちらの鑑定額は1億2000万円。会社の予算でさえ価格には届かないが、最初から1800万円しか払えなかったわけではない。評判を壊し、客を失わせ、私が焦ったところで買いたたく。それが黒川の計画だった。
資料には、契約成60以内に既舗を解体し、翌に旗艦をく程まで記されていた。まだ私が売ると言も言っていない点で、社内では取得済みののように扱われている。黒川にとって私のは、交渉すべき条件ではなく、評判を壊せば取り除ける障害だったのだ。
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佐伯は取得予算の承認者と作成を確認し、原本を会社側に残したまま、の証言と照できる箇所だけを記録した。持ちせば利になる資料でも、入方法が曖昧ならで争われる。反撃を急ぐほど、証拠を雑に扱ってはいけなかった。
「警察へ提する資料と、削除請に使う資料を分けます。さんのもありますから、公表の範囲は相談して決めましょう」
佐伯が話している最、のに黒いが止まった。
黒川は秘を1だけ連れ、返事も待たずに引き戸をけた。私の隣に佐伯がいるのを見ると、を止める。それでもすぐ笑顔を作り、い封筒を卓へ置いた。
「し誤解があったようなので、条件を見直しました。3000万円です。これなら、あなた方にも悪い話ではない」
契約の額は1800万円から3000万円へ変わっていた。その代わり、末尾には、画や連絡記録を第者へ示せず、警察への申告も取りげるという条項が加えられている。
「代ではなく、止め料ですね」
佐伯が静かに言うと、黒川の笑みが消えた。
「げさにする必はない。老舗の評判も、うちの信用も、傷が浅いうちに収めたほうが得でしょう」
「私が守りたいのは、傷のない評判ではありません。何が起きたかを、なかったことにしないことです」
私は封筒を黒川のへ押し戻した。
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彼は声をくし、証拠もないのに会社を敵へ回せば悔すると言った。
30、売が12万円にも届かず、雄と閉を考えた夜があった。それでも翌朝には汁を取り、簾をした。を続けられたのは、値段のいを持っていたからではない。ここでべる1杯を信じて通ってくれたがいたからだ。その信用を壊した本へ、沈黙と引き換えにを渡すことだけはできなかった。
その、が厨の奥から姿を現した。
「証拠ならあります。僕が撮った1分41秒の原本も、社が送った指示も」
黒川の顔から、初めて血の気が引いた。
彼がをた、結は32秒の画と元の映像を並べた検証用データを作った。公ボタンの横には、投稿刻を設定する欄がある。
「いつす?」
私は、30使ってきた振り子計を見げた。
「の午8。32秒の嘘を、1分41秒で終わらせましょう」