"「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”" 第4話
件の同じ言葉
翌の昼、には湯の沸く音ばかりが響いていた。
いつもに埋まる窓際の卓も、所の職たちが使うカウンターも空いている。簾の向こうを通るは、携帯話で名を確かめると、こちらを見ないまま歩きった。
「件目」
予約取り消しの話を切った結が、受話器の横に正の字をきした。私は必以に声をかけず、注文のない厨で汁を取り直した。鰹節のりはいつもと同じなのに、客の話し声がないだけで、は何も使われていない所のようにえてじられた。
分、毎週曜に来る製本所のが先まで来た。しかしが携帯話の画面を見せると、全員が曖昧に会釈して隣の通りへ消えた。責める気にはなれなかった。べ物の全に疑いを抱けば、確かめるより避けるほうがい。その当たりの反応まで計算したうえで、誰かは画を切ったのだ。
午に簾をろすと、結は内カメラの記録をいた。防犯用の映像には音声も残り、黒川たちが入してから退するまで途切れていない。
問題のやり取りは分秒。拡散された画は秒。削られた分秒に、柚子の種を確認する私の元、謝罪、交換の申し、そして黒川がしいそばをべる姿まで、すべて映っていた。
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「切り取ったというより、を逆にしたんだ」
結の声はりでかすれていた。
「元の記録は消さず、クラウドにも複製しておきましょう。撮刻の表示もそのままにして、触るのはコピーだけにして」
私は柚子薬の容器を密封し、そのの仕込み帳と仕入れ伝票を緒に保管した。画の説だけなら言い争いになる。こちらが守るべきなのはではなく、何が起きたかを示す記録だった。
結はの内図まで描き、の席順をき込んだ。黒川は壁側、画を撮れる通側には。そのうちは事も携帯話を横向きにてていた。は入側に座り、ほとんど顔をげていない。映像の所を決めつけることはできないが、なくとも撮能だった物は絞れる。
結がのページを調べると、夜からしく投稿された評価は件あった。そのうち件に、「異物を縁起物と言い張る」というほぼ同じ表現が使われている。
しかも、「曜に族でった」といた者がいたが、柚庵は創業から曜定休だ。「カレーそばにも髪の毛が入っていた」という投稿もあった。うちでは、カレーそばをしたことがない。
「これ、実際に来たのじゃないよ。分のに集してるし、文章まで似てる」
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「それだけで黒川さんがかせた証拠にはならない。でも、自然さを示す材料にはなるね」
結は件すべての画面、投稿刻、アカウント名を保した。私は非通のメッセージも印刷し、千百万円の契約と同じ封筒に入れた。
その、厨の棚、蔵庫、製麺台をで再点検した。包丁やざるに欠けはなく、属製の器具も本数がそろっている。異常は見つからなかったが、それではできなかった。まだこちらのらないところで、次の材料が用されているような気がした。
午分、の固定話が鳴った。
「区保健所です。柚庵さんについて、品への異物混入の申がありました。の午、営業施設を確認させていただきたいのですが」
結の顔が青ざめたが、私は訪問を承した。状態を見てもらうこと自体は怖くない。毎朝記録している蔵庫の温度表も、仕入れ先の伝票も、調理器具の洗浄記録もそろっている。
ところが、話を切る直、担当者は声をし落とした。
「のため申しげます。今回寄せられた写真は、画に映っていた柚子の種ではありません」
「では、何が写っていたのですか」
「そばのから、鋭い属片がてきたという写真です」
受話器を握るに、初めてたい汗がにじんだ。
あのがをた点では、属片の話など度もていなかった。