"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第8話
18本の赤い線
由は机を起こし、黒い帳を窓から入る朝ののへ置いた。誠司と崎が両側から覗き込み、赤線の引かれた18件を順に確認していく。
達也運送へ支払われた委託料は、同じ距、同じ積載量の社より1件あたり30万~50万円かった。さらに、運送が完するに支払われた払が5件あり、うち2件は配記録そのものがしない。
「父さんは全部気づいていたのか」
誠司の声がかすれた。
帳には支払と額だけでなく、正が経理担当者へ確認した、達也を呼びしたまで記録されていた。最のページには《部監査を入れる。内だからこそ見逃してはならない》とかれている。
由はスマートフォンの卓をき、赤線の額と通常単価との差額をつずつ入力した。数字を押す指は、昨夜の通報とは違って震えていなかった。
最初の赤線では、配記録が8便しかないに13便分が請求されていた。別のページでは、同じ見積番号が2度使われている。正はその横に《原本を確認》《達也、回答せず》とき、確認した担当者の名まで残していた。
さらに帳の巻末ポケットには、達也運送から提された見積の写しが18枚折りたたまれていた。には達也自の署名があり、帳の伝票番号と全て致している。黒い帳は単なる覚えきではなく、正が息子の正を止めるために集めた証拠そのものだった。
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18件の差額と、実体のない払を計する。
画面に表示されたのは、32400000という8桁の数字だった。
「3,240万円……」
誠司が呆然とつぶやいた。
正が残した25%の株式、18本の赤線、そして3,240万円。別々だった数字が、達也の目をはっきり示していた。由が株主になり帳簿を見れば、この流れは必ず発覚する。だから達也と千鶴子は、遺言が正式に読みげられるに由へ辞退を押しつけようとしたのだ。
「これは父さんの個な推測じゃない」
誠司は帳のあるページを指した。各支払いの横には社内伝票番号がかれ、巻末の見積には達也の署名がある。正はから照できる形で、18件すべてを残していた。
由は帳の最終ページをそっと撫でた。正は病状が悪化する、額だけでなく、誰に何を尋ね、どんな回答を受けたかまで記録し続けていた。族を疑う苦しさより、86の活を守る責任を選んだのだ。
崎が黒い帳を証拠袋へ入れた。
「この1冊で、達也さんが何をしていたからかです。正様は由さんが数字を読み、止めてくれると信じていたのでしょう」
その、崎の話が鳴った。相は野物流の経理責任者だった。崎が帳にある伝票番号を伝えると、受話の向こうでキーボードを操作する音が続いた。
『該当記録がありました。
それと、今15に達也運送へ860万円の払が予約されています』
払の申請理由は《繁忙期の両確保》だった。しかし帳には、達也運送が保する両の半数をすでに放しているという正のメモがある。860万円が送されれば、そのまま返済の穴へ消える能性がかった。
誠司が計を見た。午1120分。振込まで4を切っている。
「すぐ会社へく。支払いを止める」
誠司がちがった直、れの表から荒い音がづいてきた。
傷の残る扉が勢いよくき、達也が肩で息をしながらっていた。彼の線は、崎のにある証拠袋へまっすぐ向けられている。
「その帳を渡せ」
達也は笑っていなかった。