"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第7話
夫が母に返した言葉
「黒い帳……」
由は昨夜、れの机に残してきた類をい浮かべた。男たちは内を荒らしたが、警察が到着するまでのはかった。帳が持ちられていなければ、まだあそこにあるはずだ。
千鶴子が突然、居のへ向かった。
「どこへくんだ、母さん」
誠司がちがり、を塞いだ。
「庭を見てくるだけよ。の窓を壊されたのよ」
「れなら、警察の確認が終わるまで入れない。帳を探しにくつもりなら、なおさらだ」
いつも母親の嫌を損ねないよう言葉を選んできた誠司が、初めて正面から拒んだ。千鶴子は息子の腕をつかもうとしたが、誠司はかなかった。
「政治、あなたは誰の方なの?」
「その質問を、昨夜の由にしたのか」
静かな返答だった。それだけに、千鶴子は何も言い返せなかった。
誠司はそので会社へ話をかけ、達也運送に関する規支払いと契約変更を、自分の確認なしにめないよう経理責任者へ伝えた。全てを止める権限はなくても、父の遺言と警察汰を報告し、緊急確認を求めることはできる。
「弟を棒扱いする気?」
「確認されて困る取引なら、最初からするべきじゃなかった」
誠司が話を切ると、千鶴子は自分のっている息子ではないものを見るようにずさった。
崎は警察へ連絡し、れに正の類が残されていることを伝えた。
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現確認を終えた担当者から、散乱した物に触れず、指定された箱だけを回収してよいという返事が届いた。
庭へる、千鶴子が由を呼び止めた。
「今ならまだにうわ。被害届を取りげて、株も辞退しなさい。そうすれば昨までと同じ族に戻れるのよ」
昨までと同じ。その言葉を聞いた途端、由の体に午2の気が戻ってきた。昨までの自分は、義母の命令に従って暗いれへ入り、夫に配をかけまいと危険まで隠していた。
「昨までと同じ私には、戻りません」
由はそれだけ答え、誠司、崎とともに庭へ向かった。
背で千鶴子が泣き声をげたが、由は振り返らなかった。これまでなら、その声を聞いただけで自分がたいになったような罪悪を抱いただろう。今は、泣いているのが責任を問われた側であり、昨夜泣くことすら許されなかったのが自分だと分かっていた。
朝のので見るれは、夜よりも傷が々しかった。割れた窓のにガラス片が散り、扉にはバールを差し込んだい傷が残っている。由は入ので度を止めた。男たちの声をいし、指先がたくなった。
濡れた、古い、割れた窓から入り込む朝。匂いも音も昨夜のままだった。由の線は無識に、を隠した便所の方へ向かった。
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あの狭い隙でスマートフォンを握った自分と、今ここへ戻ってきた自分が、同じとはえなかった。
誠司がを差ししたが、由は握らなかった。自分ので敷居をまたぐことが、昨夜の恐怖に負けない最初の歩だとったからだ。
内では机が横倒しになり、類がへ広がっていた。実印を入れたバッグもをけられていたが、印鑑ケースは無事だった。男たちは由を見つけることを優先し、細かく調べるがなかったらしい。
由は正のにあった《18か所》という言葉を頼りに、の類を枚ずつ確認した。やがて倒れた机のから、角の擦れた黒い帳が見つかった。
表をくと、正の几帳面な文字で会社の取引と額が記されていた。半のページには赤い線が引かれ、その横に同じ会社名が何度も現れる。
――達也運送株式会社。
由が最初の赤印へ指を置いた、背で誠司が息をのんだ。
そこには、通常より50万円もい委託料と、支払承認者の名が残されていた。