"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第6話
25%の遺贈
「その割は、25%です」
崎が告げると、千鶴子の喉からい息が漏れた。
野物流は正が35、トラック2台で始めた会社だった。現は従業員86、県内に3つの営業所を持つ。正が保していた株式の4分の1を、血のつながらない由へ遺す。その数字が偶然や謝礼ではないことは、誰の目にもらかだった。
「25%なんて、あり得ないわ」
千鶴子がちがった拍子に、テーブルの茶碗が鳴った。
「3世話をしただけでしょう。それで会社まで取るつもりなの?」
千鶴子のでは、由が費やした3は「それだけ」の言で片づけられるものだった。病院の待で何座ったかも、夜に薬の副作用で正が苦しんだ、誰が背をさすっていたかも、最初から数に入っていない。
由は反射に否定しかけたが、言葉をのみ込んだ。以なら誤解されたくないで、何もりませんと答えていただろう。しかし昨夜、千鶴子はその慮を利用し、3の男に由を襲わせた。
「私が望んだものではありません。でも、正さんが残した理由を聞くに放すつもりもありません」
自分の声が揺れていないことに、由自が最も驚いた。
崎は続けて第3条を読みげた。由へ遺されるのは株式だけではなかった。昨夜の台となったれと、その周囲160平方メートルのも、由への遺贈として記されていた。
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「あのれまで?」
誠司が庭の方へ線を向けた。割れた窓を覆う青いシートが、朝のを受けてかすかに揺れている。
千鶴子が由をれへ移した理由も、これではっきりした。遺言が読みげられれば、あの所も類も自分たちの自由にはできなくなる。だからその夜に由を閉じ込め、恐怖で屈させようとしたのだ。
「25%の株式があれば、由さんは会社のな株主になります。帳簿や取引の確認を求め、株主総会でも確なを示せます」
野物流の事項を、千鶴子と達也だけで押し切ることはできなくなる。何より、由が正式に数字を見るを得ることを、2は恐れていた。
「由に会社を任せて、実の息子を疑ったのか」
誠司の声にはりではなく、自分へ向けた痛みが混じっていた。父に信用されなかったのではない。母と弟にくられない性格を、最まで見抜かれていたのだ。
崎の説に、千鶴子は唇を噛んだ。
「あのは、どうしてそこまで……」
「理由はこちらに」
崎は鞄から茶い封筒を取りした。表には、正のし震えた文字で《由さんへ》とかれている。
由が封を切ると、便箋が2枚入っていた。
『3、私の体と会社を支えてくれてありがとう。だが、これは介護への礼ではない』
正の言葉を目で追ううち、由の指先にの触がく伝わってきた。
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『千鶴子は達也に甘い。誠司は優しいが、母親と弟をにすると判断が鈍る。私がいなくなれば、達也は必ず野物流を自分の財布として使おうとするだろう』
誠司が苦しそうに目を伏せた。方、千鶴子は「正さんのい込みよ」とを挟んだが、崎は制止しなかった。言い訳をねるほど、の内容が正しかったと証されていくからだ。
便箋の最には、由が株式を託された理由がかれていた。
『由さん。君はの顔より先に、数字の矛盾を見ることができる。だから会社を守る25%を君に託す』
由の目に涙がにじんだ。それは財産を得たびではなかった。3、誰にも見えないとっていた自分の働きを、正だけは見ていた。その事実が、凍っていた胸の奥へゆっくり染み込んでいった。
隣で誠司が「親父らしいな」とさくつぶやいた。由は返事をしなかった。その言で夫を許せるほど、昨夜の恐怖は軽くない。それでも誠司が母親ではなく父の判断を受け止めたことだけは、静かにへ留めた。
しかし、はそこで終わっていなかった。
『れに残した黒い帳をいてほしい。18か所に赤い印をつけてある』