"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第5話
正が選んだ相
「最もきな役割を、由さんに?」
誠司が確かめるように繰り返した。由自にも、その言葉のは分からなかった。自分は野の嫁であって、正の実子ではない。遺産を期待したこともなければ、介護の見返りを求めたこともない。
千鶴子だけは、遺言の内容をある程度っているらしかった。膝ので握った両が刻みに震え、目は崎の持つ謄本かられない。
「正さんは病気でっていたのよ。由さんに言われるまま、変な遺言を作ったに決まっているわ」
「私は遺言が作成されたことさえりませんでした」
由が静かに返すと、崎も確にうなずいた。
「作成、由さんは同席していません。正様の判断能力についても、公証と証2名が確認しています」
崎は別のいファイルをいた。そこには、正が倒れてから由が処理した通院予定、薬の覧、会社類の引き継ぎ記録が、付順に残されていた。
3、正が脳梗塞で倒れてから、由は自宅と野をで40分かけて往復した。朝は病院へ付き添い、午は斎で請求を理し、夜になってから自宅へ戻る活だった。
ある、由は取引先への68万円の支払いがに処理されていることに気づいた。印刷された覧の隅へ付箋を貼り、正に確認を求めただけだったが、その指摘がなければ会社は同じ額を2度振り込んでいた。
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「細かいところまで、よく気づいたな」
子の正にされても、由はげさに受け取らなかった。
「数字は声をげませんから。こちらが見ないと、違ったまま通ってしまいます」
正はその言葉を聞くと、しばらく由の顔を見ていた。当の由は介護のために勤めていた会社を辞めたばかりで、収入も自分のも失っていた。それでも「族ですから」と笑い、負担を誠司にさえ詳しく話さなかった。
千鶴子は由が病院や斎をき来することを当然のように受け入れ、礼を言ったことは度もない。だが正は、にさない犠牲まで見ていたのだ。
崎のファイルには、そのの付箋まで保管されていた。正は由が忘れていたさな仕事を、最まで覚えていたのだ。
「介護をしてくれたから財産を与える、という単純な遺言ではありません」
崎は千鶴子を見た。
「正様はくなる直まで、ご族と会社の今を案じていました。特に、次男の達也さんが経営する運送会社との取引についてです」
達也の名がた途端、千鶴子が顔をげた。
「あの子は関係ないでしょう。今は遺産の話ではないの」
「会社の株式も、正様の財産です」
崎の言で、居の空気が張り詰めた。
誠司は横に座る由を見た。妻が介護だけでなく会社類まで支えていたことはっていたが、正がその仕事を遺言へ残すほどく受け止めていたとは考えていなかった。
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自分が「母さんとうまくやってくれ」と頼む、父は由の数字を見る力を、経営者の目で見定めていたのである。
まず読みげられた第1条では、預貯と母の建物を千鶴子と誠司へ遺すことが定められていた。千鶴子はわずかに息を吐いたものの、崎が次のページをくと、再び表をくした。
「先、もう結構です。族だけで話しいますから」
千鶴子が謄本へを伸ばした。崎は類を静かに引き、触れさせなかった。
「私は遺言執者です。昨夜、受遺者へ辞退をする事件まで起きました。ここで読みげを断する理由はありません」
由は膝ので両をねた。夜の庭で聞いた男たちの声と、空欄だった実印欄が脳裏によみがえる。千鶴子たちは、この先をられることを恐れていた。
崎は第2条へ目を落とし、語ずつ瞭に読み始めた。
「第2条。遺言者は、その保する野物流株式会社の議決権付き普通株式を、男の妻、野由に遺贈するものとする――」