"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第4話
遺言執者
警察の事聴取を終えて野へ戻った、の空はくみ始めていた。割れたれの窓には応急処置のシートが張られ、庭には男たちの跡がとなって残っている。
由は台所で富子が入れてくれたいほうじ茶を両に包んだ。湯気に触れて初めて、自分が全を震わせていることに気づいた。
「正様は、こうおっしゃっていました」
向かいに座った富子が静かに切りした。
「自分がくなった、由さんがので孤するようなことがあれば、すぐ崎先へらせてくれ、と」
富子がその言葉を聞いたのは、正がくなる3週だった。病から帰宅した正は、子のまま斎へ入り、古いれの鍵と崎の連絡先を富子へ渡したという。由には何もらせるな、ただ本当に危険が迫っただけいてくれと頼まれていた。
正は千鶴子と達也がくことを予していた。だから25仕えてきた富子に、由を守る最の役目を託したのだ。
午812分、玄関の扉が勢いよくいた。始発の幹線で戻った誠司は、スーツケースも置かず台所へ駆け込んできた。
「由、怪はないか」
抱き寄せようとする夫に、由は半歩だけがった。
「怪はありません。でも、無事だったから終わりにはできません」
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誠司の腕が力なくがった。これまで母親の言を見ないふりしてきたことが、妻を夜の庭へ追い込んだ。由の距が、その事実を何より確に伝えていた。
誠司は庭へて、割れた窓と蹴り傷の残る扉を自分の目で確かめた。戻ってきた彼の革靴にはが付き、顔はていったよりさらに青くなっていた。「母さんも悪気はなかった」という、いつもの逃げだけはもうにしなかった。
千鶴子は警察から戻ると、男たちは達也が勝に呼んだ、自分は由を配して庭へただけだと言い張った。
由は反論せず、スマートフォンをテーブルへ置いて録音を再した。
『由さんにそんな度胸はないわ』
続いて、遺言をるに終わらせろという千鶴子の声が流れる。26秒の録音が終わるまで、誠司は度も母親から目をそらさなかった。
「母さん。これでも達也が勝にやったと言うのか」
い声には、由がこれまで見たことのないりがあった。千鶴子は何か言い返そうとしたが、声にならなかった。
午830分、玄関のチャイムが鳴った。
現れたのは、縁鏡をかけた弁護士の崎隆之だった。富子から夜に連絡を受け、予定より30分く到着したのだ。黒い鞄をテーブルへ置くと、崎は由にくをげた。
「昨夜は変な目に遭われました。
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正様から、あなたの全を最優先にするよう厳命されていました」
崎は警察から押収類の名称を聞いた点で、狙いを理解していた。《遺贈辞退に関する確認》は、正が由へ遺した権利を、本ので受け取らなかった形にするためのものだった。だから実印と、由自の署名が必だったのである。
崎が取りしたのは、公正証遺言の謄本だった。正がくなる6かに作成し、原本は公証役に保管されているという。
「そんなものは無効です」
千鶴子が叫んだ。
「由さんは野のではありません。相続する権利なんてないでしょう」
崎は表を変えず、類の最初のページをいた。
「由さんは法定相続ではありません。しかし正様は、ご自分ので財産を渡す受遺者として、正式に指定されています」
「何を……何をあの女に渡したの」
千鶴子の唇が震えた。
崎はすぐには答えず、誠司と由を順に見た。そして遺言へ線を戻し、静かに告げた。
「この遺言で、正様が最もきな役割を託した相は、由さんです」