"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第3話
午217分の赤い
遺言という言葉を聞いた瞬、それまで別々に見えていた来事が本の線でつながった。
千鶴子が由の実印を探っていたこと。正の斎の引きしが荒らされていたこと。そして今、3の男が署名を迫るためれへ侵入していること。
恐怖は消えていなかった。それでも、族だから黙るという選択肢だけは、もう由のからなくなっていた。
由は録音を止めず、スマートフォンの文字通報画面をいた。所、庭の奥に隠れていること、男が3いることを打ち込み、位置報とともに送信する。数秒、「通報を受理しました。かないでください」と返信が届いた。
送信ボタンを押すまでに、指が2度も違う文字へ触れた。族を警察へ突きすことになる――そんな迷いが最まで胸を締めつけたが、割られた窓の音をいした瞬、ためらいは消えた。千鶴子が守ろうとしている族のに、自分は最初から含まれていなかった。
そのにも、男たちは植をかき分けながらづいていた。
「本当にこんなことをして丈夫なのか」
「かせるだけだ。怖いいをさせれば、すぐ従うって話だろ」
「ファイルも印鑑もれにある。本さえ見つければ終わる」
由はえた指でスマートフォンを握りしめた。画面の録音は26秒を超えている。
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男たちの目も、千鶴子の指示も残った。
午217分、い塀の向こうで赤いが回った。サイレンを鳴らさず到着したパトカーのが、庭の葉を断続に染める。
「警察です。全員、そのをくな!」
複数の警察官が裏と母側から庭へ入った。男たちは別々の方向へ逃げようとしたが、1はれの、2は植の脇で取り押さえられた。
「何をなさるの。ここは私のですよ」
千鶴子が切り声をげたものの、割られた窓とこじけられた扉は、族の論では説できなかった。
懐灯のいが庭を切り分け、無線のい声と男たちの荒い息が交錯した。つい先ほどまで自分を探していた3が面へ伏せさせられている。由はまだ隠れたまま、その景を見ていた。助かったという堵より、もう以の活には戻れないという実の方がかった。
警察官が男のバッグから、型のバール、粘着テープ、朱肉、透なファイルを取りした。ファイルには数枚の類が入り、最部には《遺贈辞退に関する確認》と印字されていた。
「野由さんは、いらっしゃいますか」
呼びかけを聞き、由は垣の隙からちがった。脚はえ切っていたが、自分のでのへ歩いた。
「通報したのは私です。そのたちと会う約束はしていません。
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れにいる刻を教えたのは、そこにいる義母です」
男の1が、逃げを探すように千鶴子を指さした。
「俺たちは、この奥さんと弟の達也ってに頼まれただけです。嫁を脅して、類に実印を押させれば30万円払うって」
千鶴子の顔から血の気が引いた。
3の男は居侵入と未遂の現犯で逮捕され、そので錠をかけられた。千鶴子も別の警察両へ乗せられ、事を聴かれることになった。
パトカーへ押し込まれる直、男の1が由を振り返った。その目には反省ではなく、たった30万円でを狂わせたことへの焦りしかなかった。千鶴子は所のに灯がともり始めたのを見ると、由の否ではなく「こんなに騒ぎにして」とく吐き捨てた。
警察官から確認を求められ、由は透なファイルを覗き込んだ。類には所と氏名が正確に印刷され、実印を押す欄だけが空いている。
そのには、由が初めて見る名が記されていた。
――遺言執者・弁護士 崎隆之。
義父は自分に何を残したのか。そして千鶴子と達也は、なぜ犯罪まで犯して奪おうとしたのか。
夜がけるに、由のはすでにきく変わり始めていた。