"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第2話
逃げは裏ひとつ
「どういうことですか。にいるのは誰なんです」
声を抑えて尋ねる由に、富子は何度も首を振った。説しているはない、と目が訴えている。
「夕方、裏から男のが3入ってくるのを見ました。奥様がれを指して、『2には眠っている』と……。1は類の入ったファイルを持っていました」
富子は夕、千鶴子が話で「実印さえ押させればいい」と話しているのも聞いていた。誰かに相談しようとしたものの、誠司には連絡がつかず、男たちが裏に集まり始めたため、れへってきたのだという。
表のノブが回り、古い扉が軋んだ。
「おい、鍵がかかってるぞ」
い男の声に、由の背筋が固まった。ただ脅かすために来たのではない。自分がここにいる刻までらされている。
机のには、実印と印を入れたバッグがあった。その横には母から運んだ正の帳と会社類が積まれている。由がバッグへを伸ばすと、富子がその首を押さえた。
「荷物は置いてください。音がたら見つかります」
「でも、実印が……」
「命より切な印鑑はありません」
扉が激しく揺れ、に置いた子の脚がを滑った。由は迷いを断ち切り、スマートフォンだけを着のポケットへ入れた。
2は勝から庭へた。に隠れたのでは、自分のさえ輪郭しか見えない。
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濡れたが首にまとわりつき、たいの匂いがを刺した。
由の膝はうように曲がらず、最初の敷で靴底を滑らせた。富子がとっさに腰を支えなければ、砂利のへ倒れていた。背で扉を蹴る音がするたび、肩が勝にねる。それでも鳴をげずにめたのは、握られた富子のが自分よりく震えていたからだった。
富子に導かれ、由は使われなくなった便所と垣のへを滑り込ませた。植がを覆い、1がようやくしゃがめる狭さだった。
「富子さんもここに」
「私まで消えたら、奥様を逃がしたと気づかれます。母へ戻って、何もらないふりをします」
富子のも震えていた。それでも彼女は由の肩を度だけく握り、暗のを母へ戻っていった。
直、ガラスの割れる鋭い音が庭に響いた。
「いたぞ。入れ」
男たちがでれへ踏み込み、引きしや箱を乱暴にけていく。由は垣に背を押しつけ、元を両で覆った。数分まで自分がいた部で、机が倒される鈍い音がした。
実印を置いてきたことへの悔が瞬こみげたが、すぐに考え直した。印鑑だけ奪われても、本がいなければい通りの形にはできない。だから男たちは類ではなく自分を探している。その理解が、暗の寒さとは別の震えを背にらせた。
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「女がいない。裏から逃げたんだ」
「探せ。朝9までに署名させろと言われてる」
署名。その言で、千鶴子が数から実印の置き所を尋ねていた理由がつながった。由のではなく、印鑑を必とする類が用されている。
懐灯のが植の隙を横切った。音が数メートル先まで迫り、由は呼吸さえ止めた。男は便所の周囲を度照らしたが、濡れたに舌打ちしてれていった。
やがて、母から聞き慣れたスリッパの音がづいてきた。
「まだ見つからないの?」
千鶴子だった。男の1が、逃げられたら警察へかれるのではないかと訴える。千鶴子はで笑った。
「由さんにそんな度胸はないわ。族のためなら自分がする女だもの」
由はポケットので録音を始した。画面に秒数が刻まれていく。
そして千鶴子は、男たちを急かすように続けた。
「くしなさい。あの子が遺言のことをるに、全部終わらせるのよ」