"午前2時、義母に追いやられた離れ" 第1話
庭の奥のれ
「今夜は、庭の奥のれで寝なさい」
義母の千鶴子がそう言ったのは、夫の誠司が2泊3の張にている曜の夕方だった。
「私の部で、ですか」
「の朝、害虫駆除の薬を入れることになったの。吸い込んだら体によくないでしょう」
庭の最奥にあるれは、くなった義父・正がかつて仕事にしていた平だった。ここ10はほとんど使われず、母とのには背のい植と、配管をした古い便所が残っている。
由は義父がくなってから12、遺品と会社関係の類を理するため野に泊まり込んでいた。だが、自分の部で虫を見たことは度もない。
「ホテルに泊まりましょうか。で15分のところにありますから」
そう提案すると、千鶴子の元から笑みが消えた。
「たった1晩におを使うなんて、正さんが聞いたら何と言うかしら。それに、嫁だけがホテルへ逃げたなんて所にられたくないの」
いつもと同じだった。族の都より体面を優先し、最には由が折れることを待っている。
3、由は脳梗塞で倒れた正の通院に付き添い、薬を分け、元経理の経験をかして会社の類まで処理してきた。波をてたくないといういが、そのたびに自分の言葉をのみ込ませた。
「分かりました。今夜だけ、れを使います」
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千鶴子は満そうにうなずいた。
自へ戻った由は、のためベッドのや窓枠を確認した。虫の骸も薬剤を置いた形跡もなく、翌朝業者が入るというのに具をかす準備さえされていない。除虫は実なのだと分かったが、なぜ今夜に限って自分を母からざけたいのかまでは見当がつかなかった。
荷物をまとめて階段をりると、千鶴子は居でテレビを見ながらをっていた。追いされる側の胸にだけ鉛が沈み、命じた側には何のさもない。その落差が、由には薬の嘘より気だった。
夜、着替えとスマートフォン、実印を入れたバッグを持ち、由は庭へた。がりの敷は黒く濡れ、砂利を踏む音が妙にきく響く。母の灯が植に遮られると、れはの敷ではなく、に取り残されたのように見えた。
歪んだ扉をけると、古いとの匂いがした。蛍灯は数回またたいてからいを落とし、机には正が用していた万が残されている。その横に置かれた布団だけが、今夜のために用されたように自然にしかった。
からは最初だけ赤茶のがた。窓の留めは錆び、母へ戻るは内からほとんど見えない。ここで声をげても、戸を閉めた母までは届かないだろう。
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由はその事実を考えないようにしながら、バッグを体のすぐ脇へ置いた。
由は内側から鍵をかけ、のため子を扉のへ寄せた。誠司には何も伝えなかった。母と妻のにたされると困ったように黙る夫の顔を、また見たくなかったからだ。
眠りは浅かった。窓をこする枝の音がするたびに目が覚め、枕元の画面を確かめた。
午156分。
砂利を踏む音が、庭の奥へづいてきた。1ではない。定の隔を置いたい音が、れので止まる。
由が息を殺した直、背の勝が細くいた。鳴をのみ込んで振り返ると、寝着にカーディガンを羽織った政婦の富子が滑り込んできた。25こので働く彼女の顔は、見たことがないほど青ざめていた。
午2ちょうど。富子は由の腕をつかみ、震える声で告げた。
「奥様、ここで寝ちゃだめです。今すぐ逃げてください」
その瞬、表の扉の向こうで、3分の靴が斉に砂利を踏みしめた。