"共通テストで950点を取った私より、880点だった妹だけを家族は祝った" 第4話
取り消された480万円
話の向こうで、正はしばらく声を失っていた。やがて激しい息遣いに混じって、のドアを叩く鈍い音が聞こえた。
「勝な真似をするな。防学なんて今すぐ辞退しろ。おには梨奈を支える責任があるんだぞ」
「その責任を、私は引き受けた覚えがない」
美空は受付棟の壁際へ移した。声は落ち着いていたが、スマートフォンを持つには汗がにじんでいる。くを通った女性職員が様子に気づき、しれた所から見守ってくれた。
「梨奈の部はもう契約したんだ。具も50万円分注文した。おが毎8万円入れなければ、4で384万円もりなくなる。族当まで止まったら、わせて480万円だぞ!」
正が初めてにしたのは、美空を配する言葉ではなく、失われる額だった。
「それは、お父さんたちが私に確認せずに作った計画でしょう。私のを480万円として計算しないで」
「親に向かって何を――」
背から、恵子と梨奈の声もした。
「美空、梨奈の入学を台無しにする気?」
「お姉ちゃんだけ逃げるなんて卑怯だよ。私、友達にもう部の写真を見せたんだから!」
美空は目を閉じ、をるまで何度もので練習した言葉をにした。
「私の950点をに捨てたたちが、私の料だけを分先に使うことはできない。梨奈の学は、梨奈と両親で考えて」
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「だったら警察に捜索願をす。学にも話して、入を取り消させるからな」
「私は18歳で、自分ので続きを終えています。族だからといって、取り消すことはできません」
正はなおも鳴り続けたが、美空は通話を切った。直、膝から力が抜けそうになり、壁へ片をついた。
先ほどの女性職員がコップのを差しした。
「丈夫ですか」
「はい。し震えているだけです」
美空はをみ、呼吸をえた。怖さは消えていなかった。それでも、自分の言葉で父を拒んだことで、閉め切られていた部に初めてが通ったようにじた。
女性職員は、部から族が来ても本の同なく面会させることはないと説し、必なら相談担当にもつなぐと伝えた。美空は礼を言い、案内された学舎へ向かった。廊にはしい靴音と、荷物を運ぶ台の音が響いている。
指定された寝台のには、制や用品が過なく置かれ、その番に《神美空》と印字された名札があった。妹の姉でも、計表の480万円でもない。自分の名だけが記された布片を指でなぞると、遅れて涙が滴こぼれた。美空はすぐに拭い、同になる学へ向き直った。
「神美空です。よろしくお願いします」
にした名は、これまでよりしだけ確かな響きを持っていた。
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そのころ正のもとには、事部からしいメールが届いていた。
《族当現況届に関する事聴取。本14、事部会議へしてください》
添付されていたのは、正自が提した類の写しだった。美空の署名に赤い枠がつけられ、そのには鈴のい追記がある。
《ご本から、この署名をした事実はないとの申告を受けています》
正の喉が鳴った。
族当2万円が止まるだけではない。支候補としてんでいた昇格審査も、虚偽申告の調査が終わるまで保留するとかれている。
午2。事部会議に入った正のには、鈴と法務担当者、そしてさなスピーカーが置かれていた。
鈴は扉を閉め、机のの再ボタンへ指を伸ばした。
「神さん。まず、娘さんから提供された1分42秒の録音を確認します」