"離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫" 第3話
5のオーナー
父の葬儀から、私は座の商業ビル階にある会議で、浩司が来るのを待っていた。
窓のをとの列が流れ、磨かれたテーブルには午のが細く伸びていた。私は父が遺した紺のスーツを仕て直して着ていたが、見慣れないに守ってもらうつもりはなかった。元にあるのは、公正証遺言と相続登記を終えた登記事項証、そして父がか分つけていた賃料台帳である。
階の受付では、制姿の女性が私の名を確認してくをげた。までなら、その礼は自分に向けられたものではないとずさりしただろう。エレベーターががるものひらには汗がにじんだが、父の鍵を握ると、たい属の触が気持ちを落ち着かせてくれた。私は浩司を驚かせるために来たのではない。父が残した建物と、ここで働くたちを守るために来たのだ。
午ちょうど、扉がいた。浩司に続いて、美穂と産仲介業者の修平が入ってくる。は分い契約を抱え、美穂は葬儀のと同じ甘いをまとっていた。
私を見た浩司はを止めたが、すぐに嘲るような笑みを作った。
「由美、こんなところまで何をしに来た。慰謝料をもらい損ねて、俺の会社へ頼みに来たのか」
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「今は、あなたの会社の賃貸借契約について話します」
「部者がをすな。これからさんとビルの買い取りをめる。しいオーナーとは話がついているんだ」
がさく咳払いし、美穂は私の古い鞄へ目を落として笑った。浩司はまだ、自分が利な席に座っていると信じている。
伊藤先が会議へ入り、全員に名刺を配ったあと、登記事項証をスクリーンへ映した。
「最初に訂正いたします。様が示された買い取り提案について、所者は承諾しておりません。田郎様のにより相続が発し、本午、所権移転登記が完しました」
画面には、所、番、建物番号に続いて、しい所者の氏名が表示された。
田由美。
浩司の笑みが消えた。子を引きかけた姿勢のまま、彼は私と画面を何度も見比べている。隣の美穂も唇をいたが、声はなかった。
「何かの違いだ。由美の父親は、で暮らしていたはずだぞ」
「本物件の現の評価額は、建物をわせて億円です。ただし、評価額は現ではありません。今の管理責任と納税義務を含め、由美さんが単独で承継しています」
伊藤先が評価と公正証遺言の写しを並べた。浩司はようやく子へ腰を落としたものの、指先はテーブルの縁をつかんだままだった。
「夫婦だったんだぞ。俺にも半分は――」
「相続財産は夫婦の共財産ではありません。それに、婚届は昨受理されています」
私は役所の受理証を差しした。浩司は自分で提した類の付を見て、初めて喉を鳴らした。
「由美、待ってくれ。葬儀のは俺も混乱していた。も緒にいたんだ。話しえば、まだ――」
「今は元夫婦の話しいではなく、所者と賃借の面談です」
自分でも驚くほど静かな声がた。私は父の賃料台帳を伊藤先へ渡した。
彼は赤い帯のついた請求を浩司のへ滑らせた。表に印字された額を見た瞬、浩司の顔から残っていた血の気まで引いていく。
未払賃料等請求額――千百万円。