"離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫" 第2話
の鍵
翌朝、浩司から「提した」といメッセージが届いた。私は役所に受理証を請求し、その写しを持って伊藤法律事務所へ向かった。
応接の窓からは、まだのいしか入っていなかった。机のに置かれた属箱への鍵を差し込むと、乾いた音がして蓋がいた。には公正証遺言、登記事項証、資産評価、それに父の跡で「由美へ」とかれたい封筒が収められていた。
「田郎様は、座丁目にある階建ての商業ビルを所していました」
伊藤先が示した評価の数字を、私はすぐには理解できなかった。
億円。
現の残ではなく、と建物をわせた現の評価額だという。父は古いで質素に暮らし、特売の豆腐を買うだった。そんな父が都のビルを持っていたなど、か同じ根ので介護した私さえらなかった。
評価に添えられた写真には、ガラス張りの壁と、座の交差点から本入った通りが写っていた。私はその建物をっている。浩司の会社へ弁当を届けるため、何度も階の受付を通った所だった。父は私のすぐそばに億円の資産を置きながら、ただの度もそれを誇らなかったのだ。数字のさより、秘密を抱え続けた父の孤独のほうが胸に迫った。
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「相続は、私ですか」
「公正証遺言で、このビルは由美さんだけに遺贈されています。相続はお父様がくなられた点で発しており、婚したから所できたわけではありません。婚姻であっても、相続財産は由美さん固の財産です」
伊藤先は、誤解を残さないよう語ずつ区切って説した。父が内容の告を婚届の受理まで禁じたのは、浩司に相続権があるからではない。財産をった彼に署名を撤回させたり、私の実印を使わせたりしないためだった。
評価額のきさに息が詰まりそうになったが、机には相続税の試算と納税資の覧もあった。父は命保険と管理会社の積を組みわせ、建物を慌てて売らずに済む準備まで終えていた。
私はい封筒をいた。
『由美へ。額に驚かなくていい。これはおにぜいたくをさせるではなく、自分のを選び直すための所だ。を助けるときは、相の言葉ではなく、そのが何を選んだかを見なさい』
読みめるうち、文字がにじんだ。父は私が浩司に従い続けてきたを、責めずに見ていたのだ。
伊藤先は別の類を私のへ置いた。ビルの賃借覧で、階の欄に見慣れた社名があった。
株式会社佐藤デジタル。
浩司がに起業したIT会社である。
父は創業直の会社を自分のビルへ入居させ、名義を伏せた管理会社を通じて支えていた。しかし直か、賃料の入が度もない。
「お父様は病状が悪化する、佐藤社に度、支払い計画の提を求めました。返答はありませんでした」
伊藤先は、赤い印のついた枚を指した。の午、滞納問題を扱う緊急面談がこのビルでかれる。浩司には「所者の代理が席する」とだけ通されているという。
「相が元夫でも、面談を延期できます」
私は父のを封筒へ戻し、受理証と並べた。昨までなら怖かったかもしれない。だが浩司は、自分ので私との活を切り捨てた。
「いいえ。私が席します。しい所者として」