"やさしい義母の消しゴム" 第9話
瞬、部のの空気が凍りついた。
真由美さんの顔から、すっと血の気が引いていく。
「な、何を言っているの麻美ちゃん? 病気のせいで混乱しているのね……!」
「いいえ、混乱していません」
私はゆっくりとちがり、粗末なチュニックの裾を静かにえた。
「それから、この見申請。私を『精神疾患』だと証するために、あなたが私に黙って所のクリニックで捏造したカルテのコピーが添付されていますね」
「お、お……! 何を言しやがるんだ!」 哲也がちがり、私を睨みつけた。 「母さんがおのためにどれだけ尽くしてきたか忘れたのか! この恩らずが!」
「哲也さん」
私はまっすぐに哲也の目を見つめた。その徹な線に、哲也が瞬たじろぐ。
「あなた、お母様が毎がに通って、何をしてくれていたかっていますか?」
「何って……掃除と事だろ!」
「いいえ。彼女がしていたのは、私の『の消』です」
私はバッグから、冊のバインダーを取りし、テーブルのに叩きつけた。
コン、と静かな音が会議に響き渡る。
「過半の、防犯カメラ映像の解析データ。のから消えた私の私物のリスト。そして、お義母さんが私に毎ませていた『麦茶』から検された、製抗薬の微量成分の鑑定です」
真由美さんがガタガタと震え始めた。
「な、何よそれ……! そんなの嘘よ! この子はがおかしくなっているんです! 皆様、騙されないでくだ――」
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その。
会議のなドアが、から静かにかれた。
「――騙されているのは、真由美様、あなたの方ですよ」
黒のつ揃いスーツを着こなした、髪の紳士が入ってきた。 そのろには、警察官と、ホテルの支配、そして教育OG会の会である元の姿があった。
「た、橘先……!?」
融関の担当者が、入ってきた紳士の顔を見て青ざめた。
橘先は優雅に礼すると、私に歩み寄り、恭しくをげた。
「お嬢様。お約束の刻限でございます。すべての準備がいました」
そのは、真由美さんにとって「完璧な勝利の」になるはずだった。
曜の午。真由美さんは珍しく、濃い紺のフォーマルなスーツにを包んでがにやってきた。
「麻美ちゃん、お着替えは済んだかしら?」
真由美さんの声には、隠しきれない興奮と抑圧された歓が混じっていた。
「ええ、お義母さん。これでよろしいでしょうか」
私が部からていくと、真由美さんは満そうに頷いた。 着せられているのは、あのくすんだグレーのチュニックと、爪先の丸い粗末な靴。髪はろで適当に束ねられ、鏡のの私はどこからどう見ても「自信を失い、姑に従属するれな主婦」そのものだった。
「完璧よ。……さあ、きましょうか。今は切な『ご報告』のだからね」
き先は、内のホテルで催される「世田区教育OG会・の親睦例会」
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だった。 元教師である真由美さんが毎楽しみにしている、域の名士や元、元政官たちが堂に会するイベントだ。
真由美さんは、私をに乗せながら優しく語りかけた。
「今の例会のあとね、特別にを取ってもらっているの。域の福祉協議会と、私がお世話になっている融関の理事さんたちが集まる会議でね。そこで、麻美ちゃんの『見申請』と『債務承継』の最終類にサインをしてもらうわ」
「債務……承継、ですか?」
私がそうに尋ねると、真由美さんは私のを力く握りしめた。
「ええ。麻美ちゃんの将来のためよ。麻美ちゃんが病気で働けない、私が責任を持ってすべての資産と負債を管理するための、公な続きなの。丈夫、私が全部守ってあげるからね」
真由美さんの目が、狂気を含んだ歓でギラギラと輝いていた。
彼女の狙いは確だった。
かつての同僚や域の名士たちので、「病気の嫁を健気に支える聖母」として自分を完璧にプロデュースする。 そしてその直、社会信用という威を背負ったまま、私に公な債務承継類(実質な千万円の借となしの底の信託委任)にサインさせ、私を完全に「積載完した捨て駒」にするつもりなのだ。
◇
ホテルの宴会は、華やかな気に包まれていた。
級なやスーツにを包んだ老婦や紳士たちが歓談している。