"やさしい義母の消しゴム" 第3話
驚かせてごめんなさいね。でもね、麻美ちゃんは世らずだし、もし棒にでも入られたら変でしょう? うちの実の庫で切に保管しておくから、してちょうだい。必なときは、いつでも私に言いなさいね」
「……はい。お数をおかけして、すみません」
私は静かに微笑んだ。 真由美さんは「分かってくれればいいのよ」と、私の肩をおしそうに撫でた。
自分の権利や所物を奪われているのに、相にお礼を言わなければいけない空。 こののは、すでに真由美さんの作った「狂った常識」で満たされていた。
◇
午。真由美さんに頼まれ、私はマンションの階にあるゴミ集積所へ向かった。
エレベーターをり、エントランスを通ろうとした、同じフロアにむ佐藤さんという女性と鉢わせした。
「あ、麻美さん。おはようございます」 「佐藤さん、おはようございます」
私が挨拶を交わすと、佐藤さんはどこか探るような、そして痛々しいものを見るような目で私を見つめてきた。そして、声をひそめてづいてくる。
「……麻美さん、お体、丈夫なの?」 「え?」 「真由美さんから聞いたわよ。あなた、環境の変化で精神にかなり参っちゃってて、でお買い物にくのもな状態なんですってね。……本当によいお姑さんを持ったわねえ。自分のを削ってまで、毎あなたのお世話に通ってらっしゃるなんて、実の親でもなかなかできないわよ」
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胸の奥で、たい塊が沈んでいくのが分かった。
――精神に参っている。 ――で買い物にもけない。
真由美さんは、私が部にこもっているに、マンションのにこの「嘘」を吹聴して回っていたのだ。 私がで何を訴えても、「あの嫁は病気だから」の言で処理されるが、完璧に作りげられていた。
「……ええ、お義母さんには、本当に謝しています」
私は力なく笑ってみせた。 佐藤さんは「無理しないでね」と私の腕を優しく擦り、満そうにっていった。
堀は、完全に埋められている。 だが、真由美さんが焦ってここまで引な「罠」を仕掛けてくるのには、必ず理由があるはずだった。
◇
午。 リビングで洗濯物をたたんでいた真由美さんのスマートフォンが、けたたましく鳴り響いた。
画面を見た真由美さんの顔から、瞬だけ「仏の笑み」が消えた。 険しい表でちがると、私に背を向けてベランダへと向かう。
「ちょっと話にてくるわね」
サッシが閉まり、ベランダから真由美さんのひそひそ声が聞こえてくる。普段の品のある声とは違う、く引きつった声だ。
「……ですから、今分はもうし待ってくださいと言っているでしょう。……ええ、角印も実印も用できますから。……今週には確実に」
ガラス越しに見える真由美さんの背は、りと焦燥で微かに震えていた。
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私はたたんでいたタオルを静かに置き、ダイニングの子へ線を滑らせた。 そこには、真由美さんがいつも持ち歩いている、きな革のトートバッグが置かれていた。
ファスナーが、わずかにセンチほどいている。
ベランダの真由美さんは、完全に話にになっていた。 私は音を殺してづき、バッグの隙にそっと指を滑り込ませた。
にあったのは、茶封筒と、何枚かのの類。
番にある類を、指先でしだけ引きす。
『連帯保証承諾 兼 担保提供同』
類のタイトルが目にび込んできた。 発元は、正規のではなく、怪しげな民融関の名。
そして、主債務者の欄には『真由美』の名。 そのすぐの、連帯保証の欄――。
そこに記載されていたのは、私の名だった。
昨まで私の引きしにあったはずの「実印」が、朱肉も鮮やかに、私の名の横に寸分違わず捺されていた。
額の欄に目をらせる。
『 参千万円』
千万円――。
さらに類の奥を覗くと、真由美さんが定直にをして失敗したという、方の産投資の焦げ付きに関する催促状が何枚もてきた。
(……なるほど。そういうことだったのね)
真由美さんは「聖母」などではなかった。 元教師という世体と、贅沢な暮らしを維持するために作った額の借。