"十三足目の黒い靴" 第12話
「失礼、鍵を閉め忘れていたかもしれません。僕が見てきます」
「いいえ、宗郎さん」
私は静かにちがった。着物の裾をすべらせ、皆の線が集するで、澄んだ声で言った。
「私が対応してくるわ。……今のために、私が特別にお招きした事なお客様だから」
宗郎の瞳の奥で、カチリと何かが引っかかるような、微かな警戒のがった。
「事なお客様……? 美咲、君は誰にも連絡していないはず……」
「ええ。あなたが私のスマホを遮断していたからね。だから、別の方法で来ていただいたの」
リビングの空気が、凍りついたように静まり返った。
私は宗郎の顔を見つめ、今まで度も見せたことのない、たく鋭い笑みを浮かべた。
「さあ、宗郎さん。あなたの作ってくれた『13の靴』の物語を、皆さんに披するよ」
「美咲……何を言っているんだい? 急に部をて、また混乱しているのか……」
宗郎の顔から、完璧だった笑みが引き攣るように消えていった。彼は焦りを覆い隠すように、げさな溜め息をついて客たちに向き直った。
「皆さま、申し訳ありません。妻は々、こうして現実と妄の区別がつかなくなってしまうんです。美咲、客へ戻って休みなさい」
宗郎が私の腕を掴もうとを伸ばした、その。
々しい音とともに、玄関のドアがきくけ放たれた。
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「失礼します。最寺美咲さんの代理弁護士・佐々です。警察官のち会いのもと、緊急の権利保全続きに参りました」
スーツ姿の佐々弁護士を先に、制を着たの警察官、そして公証役の公証が然とを踏み入れてきた。
「な……なんですか、あなたは! 法侵入だ! てきなさい!」
宗郎の声がずり、リビングにいた親族や自治会たちが騒然となる。
「宗郎さん。てくのはあなたよ」
私は静かに言い放つと、玄関の靴箱の最段の扉を、両で気に押しけた。
「……ッ!?」
そこに現れた景に、居わせた全員が息をのんだ。
靴箱の奥から玄関のタタキにかけて、然と並べられた13のまったく同じ黒い平底靴。 すべての靴の脇には、付がかれたさなカードと、透なビニール袋に入った「のサンプル」が添えられていた。
「これを見なさい、皆さま」
佐々弁護士が、公な鑑定をく掲げた。
「桐院宗郎氏は、過にわたり、同デザインの靴を毎特注し、図に『青の赤』を付着させて自宅へ配送させていました。そして、健康な美咲さんに微量の成分を投与して体調良を作りし、『妻が夜に青へ徘徊している』という偽りの事実を捏造していたのです」
「な、何を馬鹿な……! それは美咲が勝に買い集めて、徘徊した証拠だ!」
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宗郎が叫ぶ。だが、佐々弁護士は酷なまでに静かな声で言葉をねた。
「いいえ。ここに、靴の注文履歴と、あなたのクレジットカードの決済細、そして今朝届けられた13目の靴の購入指示があります。さらに——今朝、美咲さんが回収したこれらの靴底のは、鑑定の結果、青のではなく『このの庭の』へとすり替えられていました」
公証が歩へた。
「宗郎氏。あなたが『妻が青で靴を汚して帰ってきた』と帳に記録した付の靴底から検されたのは、青ではなく、あなたのご自宅の庭のです。……あなたが妻の徘徊を確認せず、あらかじめ用されたつきの靴を械に靴箱へ追加していたかぬ証拠です」
「嘘だ……嘘だ! 美咲、おが僕をハめたのか!?」
宗郎の顔から「聖」の仮面が完全に剥ぎ取り、醜い狂気がわになった。彼は私にびかかろうとしたが、即座に控えていた警察官によって両腕を押さえつけられた。
「せ! 僕は妻をしているんだ! 僕は献な夫なんだぞ!!」
「宗郎さん」
私は胸ポケットから彼の帳を取りし、パラパラとページをめくった。
「あなたが作ってくれた『観察記』。すごく几帳面で、完璧だったわ。……でもね、あなたが私を狂わせようとしている、私はずっと正気だったの」
私は帳の最のページをき、ブラックライトのを当てた。
そこに浮かびがったのは、線で発する私の跡。