"十三足目の黒い靴" 第10話
だ。
宗郎はそこで、病気の妻を献に支える「美談」を披し、世の同と称賛をに集めるつもりでいた。
(その所で、あなたの完璧な仮面を剥ぎ取ってあげる)
私は佐々先に返信を送った。
『先、曜の午に、がのに待していただけますか。警察への通報準備と、公証の先の同をお願いします』
『承しました。美咲さん、くれぐれもそれまで悟られないよう、体調に気をつけてください』
メッセージを消し、古いスマホの源を切って再びバッグの奥底へ隠した。
リビングへ戻ると、玄関の鏡に映る自分の顔を見た。 そこには、今朝までの虚ろで怯えた病の表はなかった。徹で、静かな志を宿したの女性の顔があった。
宗郎、あなたは私からの世界を奪ったつもりでいたのでしょう。 でも、あなたが奪ったのは私の「自由」であって、「性」でも「り」でもない。
檻のドアをける鍵は、もう私ののにある。
祝賀会まで、あと。
私は宗郎の目ので、完璧な「壊れかけた妻」を演じ続けていた。
「宗郎さん……私、またお昼の記憶が曖昧なの。買い物をしようとしたのに、スーパーの途で自分がどこにいるか分からなくなって……」
夕の席で、私は箸を止め、に震える声で告した。
宗郎はおしそうに目を細め、私のに自分のをねた。
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「丈夫だよ、美咲。君の認症状はゆっくり、だが確実にんでいる。でも怖がることはない。曜の祝賀会が終わったら、君の将来のための続き(成見制度)を本格にめよう。すべて僕に任せておけばいい」
「ええ……あなただけが頼りよ」
私は力なく微笑み、彼の温かなにすがりつくフリをした。 宗郎の元が、勝利を確信した優越で歪むのを私は見逃さなかった。
彼が完全に油断し、自分が描いたシナリオの完成に酔いしれている——今こそが、罠を仕掛ける絶好の会だった。
翌の午、宗郎が社し、を空けた数。 私はビニール袋を着用し、玄関の靴箱の最段をけた。
そこには、然と並ぶ12の黒い平底靴と、先隠した13目の靴。
私はあらかじめ用していたピンセットとさなジップロックを取りし、13すべての靴底から、乾燥した赤い粘質のを丁寧に削り落として回収した。
そして、佐々弁護士から事に郵送されていた「分析用検体袋」へと封入する。 青の特定の敷にしかしない特殊な成分であることを証し、なおかつそれが「品の状態で付着していた(使用による摩擦痕がない)」ことを鑑定関に証させるためのサンプルだ。
だが、これだけでは終わらせない。
私は靴底のをすべて綺麗に払い落とすと、代わりに庭の普通の黒を微量だけ付着させた。
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もし宗郎が祝賀会のに靴箱を確認しても、がついていること自体には気づかない。しかし、そのが「青の赤」から「自宅の庭の」へとすり替わっていることに、彼は当まで絶対に気づかないはずだ。
続いて、私は宗郎の斎へ向かった。
鍵を破り、デスクのダイヤル式京錠を解除する。 引きしのから『最寺美咲・管理および精神状態観察ログ』のレザーファイルを取りした。
私は帳の最のページ——祝賀会当である「曜」の欄に、彼の几帳面な跡を模して、鉛でくさな印(ドット)を打ち込んだ。
彼が当、来客ので「ほら、今も妻はけ方に徘徊し、この帳に記録があります」と提示するための、のページ。
私はそのページの裏側に、特殊な浮きでインク(線をあてると発する蛍ペン)で、さなメッセージをき込んだ。
『桐院宗郎様。あなたの完璧な記録を、より楽しみにしております』
ファイルを引きしに戻し、京錠のダイヤルを「0-9-0-1」にわせて完璧にロックする。
鍵をしめ、斎をた、私の胸のにあったのは恐怖ではなく、恐ろしいほどの揚だった。
宗郎は自分を「盤のチェスプレイヤー」だとっている。 私が彼のコマであり、彼の指し通りにしかかない形だと信じ切っている。
だが、彼は気づいていない。