"十三足目の黒い靴" 第6話
『20231012:夕のスープに微量の〇〇(特定の成分)を添加。翌朝、軽度の痛と認の遅延を確認。「邪を引いたのだろう」と暗示をかける』
『20240305:妻の友・由からの話をカット。妻には「誰も君に連絡してこない」と伝える。疎の植え付けに成功』
『20241120:青のを付着させた靴を靴箱へ補充。朝、「夕べへていただろう」と問い詰めると、揺を見せる。自の記憶への信が定着しつつある』
血の気が引いていくのが分かった。が氷のようにたくなり、吐き気がこみげてくる。
彼は、私が体調を崩すのを待っていたのではない。 私に微量の成分を摂取させ、図に痛や倦怠を作りし、部との連絡を断ち切り、捏造した証拠(靴)を突きつけることで、私の正気を自らので破壊していたのだ。
だが、なぜ? なぜ彼は、ここまでして私を「病気の妻」に仕てげる必があるのか?
ページの最に挟まれていた枚の類をいた瞬、そのすべての謎が解けた。
それは、私の実である最寺が所する「青ギャラリー・しずく」の権利と、『成初見・成見選任申請』の控えだった。
類の「本」の欄には私の名。「成見候補者」の欄には、桐院宗郎の名が記されていた。
添えられた医師の診断(あのクリニックのものだ)には、こう判を押されていた。
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『度の認障害および妄性障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある』
宗郎の目は、単なる精神支配ではなかった。
私を公に「判断能力のない精神疾患患者」として認定させ、法に成見となり、私の実が残した青の広なと資産の全管理権を奪い取ること。
そして、世に対しては「失の妻を健気に支え続ける、聖ような夫」としての社会位をに入れることだった。
(……許さない)
震えていた指先から、スーッと恐怖が引いていくのが分かった。代わりに腹の底から湧きがってきたのは、今までじたことのないほど静かで、徹なりだった。
宗郎は私を「何もらない籠のの鳥」だとっている。 自分が作った完璧なシナリオ通りに、私が崩壊していくのを楽しんでいる。
なら、その完璧なシナリオを、利用してあげる。
私はスマホを取りすと、ファイルにかれたすべてのページ、薬の投与記録、そして成見の申請類を、音をてずに枚枚撮した。
引きしを元通りにロックし、鍵をかけて部をる。
ベッドに戻り、宗郎の隣に横たわった、私のは議なほど穏やかだった。
から、私は「宗郎が望む通りの狂った妻」を、完璧に演じてみせよう。
彼が仕掛けた罠のすべてを、彼自の首を絞める絞首縄に変えるために。
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翌朝、。 台所に漂う汁のりが、いつもと変わらない平穏な朝を演していた。
「美咲、体調はどうだい? 昨の夜は、うなされることもなくよく眠れていたようけれど」
卓についた宗郎は、聞を広げながら穏やかな声で尋ねた。その線は面に向いているようでいて、私の表や元の挙投を鋭く観察している。
「ええ……お薬のおかげかしら。昨の夜は、とてもいを見ていた気がするわ」
私は微笑みを浮かべながら、丁寧に取った汁で仕てた噌汁を彼のに置いた。
「い?」
宗郎が聞を折りたたみ、興そうに眉をげた。
「ええ。靴を履いて、どこか赤いのをずっと歩いている。……宗郎さん、私、ので青のギャラリーにいたの。お父様が昔、私に譲ってくれたあの画廊に」
宗郎の箸を持つが、ほんのコンマ数秒、ピタリと止まった。
彼が私に与えてきた暗示は「夜の無識な徘徊」だ。だが、その徘徊のき先が「青の」であることまで私が具体ににしたのは、これが初めてだった。
「……そうかい。にまでてくるとは、相当気に病んでいるんだね。でも美咲、あのギャラリーは君のお父様がくなってからずっと閉鎖されている。君がでけるような所じゃないよ」
「そうよね。でも、すごくリアルだったの。
靴底に赤いがべったりついていて……朝起きたら、自分のがすごくくじて」