"「一円もやらない」姑と二十六億円の遺言" 第16話
それは佐藤の財産とは完全に切りされた、私だけの、私の父の魂が宿ったおだった。
その、病院の入りから叫び声が聞こえてきた。
「彦、彦じゃないの」
振り返ると、恵子さんと美咲さんが髪を振り乱してこちらへってくる。
恵子さんが彦の腕にすがりつき、涙ながらに訴える。
「彦、あなた今までどこにいたのよ。変なの。あのゆきがね、お義母様を見捨てて、私たちのやまで奪おうとしているのよ」
美咲さんも必の形相で彦の顔を覗き込む。
「そうよ。彦さん、あなたからゆきさんに言ってやって。私たちに謝って、今すぐ差し押さえを解くように言って。兄弟でしょう?助けてくれるわよね」
彼女たちにとって、彦は佐藤の息子であり、自分たちの側にってくれる最の希望だったのだろう。
しかし彦は、酷にそのを振り払った。
「いい加減にしろ、恵子さん、美咲さんも。自分たちが今まで何をしてきたか、本当に分かっていないのか」
恵子さんは反論する。
「何をって、私たちは普通に活していただけよ。お義母様だって私たちを頼りにしていたわ」
彦の声はりに満ちていた。
「普通じゃない。君たちが使っていたのは、ゆきの父親が命を削って残したものだ。親父がずっと抱えていた罪のさを、俺たちは息子としてせめてしでも分かちうべきだったのに。
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あんたたちはその罪ので踊っていただけじゃないか」
彦は私を見つめた。
「俺はゆきを全面に支持する。今この瞬をもって、俺も佐藤の縁を切る。君たちがに入れた16億円のと10億円の。それがどれほど呪われたものか、今から教えてやろう」
彦はポケットから通の通を取りした。
「これは国税局から俺宛てに届いた、会社の過の納税記録の写しだ。親父はあえて、あのとの登記を放置していた。なぜだか分かるか。あの産には、取得当初からの数に及ぶ未払い税と延滞が付随しているからだ」
彦はややかに告げる。
「名義を変更した瞬、その全ての支払い義務は相続したに移る」
恵子さんと美咲さんの顔から急速に血の気が引いていった。
恵子さんはうわ言のように呟く。
「な、名義変更した瞬に……」
彦は容赦なく続ける。
「そうだ。お義母様から譲り受けたとんでいたが、君たちが受け取ったのは権利じゃない。膨れがった借そのものだ。今更相続放棄はできない。もう受諾してしまったんだからな」
美咲さんがそのに崩れ落ちた。
「う、嘘よ……そんなの嘘よ」
16億円の、10億円の。
その輝かしい称号の裏には、文字通りを潰すほどの巨額の負債が隠されていたのだ。
彦が私の肩を抱いた。
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「ゆき、こう。もうここに俺たちの居所はない」
私は元で震えている義姉たちの姿を、最にもう度だけ見つめた。
「お義父様はこのを本当にしているにだけ救いを与えようとしていました。もしあなたがをステータスではなく、族を守る所だとっていたなら、税の肩代わりも私がするつもりでした。でも、あなたはそうではなかった」
私はたく告げると、彦と共にに乗り込んだ。
バックミラーに映る彼女たちの絶叫と、追いかけてくる醜い姿。
「待って、ゆきさん、彦。かないで。助けて、助けてよ」
しかしその声は締め切った窓に遮られ、次第にざかっていった。
真実が全て見えた今、私のにはかつてないほどの静寂が訪れていた。
しかし、まだつだけ解決していないことがある。
それは、病で残された義母、苗さんの最だ。
をらせながら、私は彦に尋ねた。
「彦さん、お義母様はこれからどうなるといますか」
彦はを見つめたまま、静かに答えた。
「自業自得という言葉をそのをもってることになるだろう。でも、つだけ彼女がらない最の事実があるんだ。それをった、彼女は本当ので崩れ落ちるだろうな」
私は彦の横顔を見つめた。
「最の事実?」
物語の真相は、まだ底が見えない淵へと続いていたのだ。
数、16億円の豪邸。
かつては佐藤の栄華の象徴だったその所は、今や阿叫喚の獄へと化していた。