"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第19話
箱ティッシュ、洗剤、タオル、子供用のコップ。
活を始めるのに今必なものばかりだった。
「とりあえず、今使う分だけしとこうか」
「うん」
「りないものは、また買えばいいから」
私は頷いて、ダンボールから優馬の着替えをした。
さなTシャツを棚にねる。
ズボンを畳む。
パジャマを1番取りしやすいところに置く。
それだけのことなのに、議なくらい気持ちが落ち着いていた。
優馬はさなリュックを背負ったまま、部のを歩き回っていた。
しいを確かめるみたいに、ペタペタと音をてながら歩く。
「ここ、しいお?」
私はしゃがんで、目線をわせた。
「そうだよ」
「パパ、来ないの?」
瞬だけ、言葉が止まった。
でももうごまかしたくなかった。
「来ないよ」
優馬はしだけ考えた。
その顔に寂しさが浮かぶかとったけれど、そうでもなかった。
「パパ?」
「うん。すぐ来られるよ」
優馬はそれを聞いて、したように頷いた。
「じゃあ、丈夫」
その言葉に、私と母はわず笑ってしまった。
「うん。丈夫、丈夫」
それは本当は、誰かに言って欲しかった言葉だった。
でも今は、優馬のからそれを聞いた。
夕飯は、母が買ってきてくれた惣菜を並べた。
鮭の塩焼き、ひじきの煮物、卵焼き、温かいご飯。
優馬はさなテーブルに座って、鮭をほぐしながら言った。
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「お、静かだね」
「そうだね」
のでは、いつも何かを待っていた。
啓介が帰ってくる音。
嫌の悪くないタイミング。
何かを頼んでも面倒くさそうな顔をされない瞬。
そんなものばかりを無識に待っていた。
でも、ここにはそれがなかった。
誰かの嫌を伺う必がない。
何に帰るのか分からないを待たなくていい。
蔵庫にビールがあるかどうか気にしなくていい。
静かだった。
そしてその静けさは、寂しさじゃなくて解放だった。
夕飯の、私は優馬の保育園バッグを確認した。
連絡帳、着替え、タオル、おしぼり。
のでもやっていたことなのに、妙にが軽かった。
ここは元に戻るための所じゃない。
これからえていく所だった。
それがやけによかった。
翌、弁護士から連絡が入った。
「こちらの向を、先方にお伝えしました」
「それから、先方のお父様からも度お話がありました」
私は無識に、背筋をし伸ばしていた。
「かなりい調でしたが、今は全てこちらで対応します。ゆかさんが直接やり取りされる必はありません」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
そして引っ越して3目の夜だった。
優馬を寝かしつけて、部のかりをし落としたところ。
スマートフォンが震えた。
弁護士からのメッセージだった。
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『先方が、1度だけ直接話したいと希望しています。ご判断はお任せします』
私はしばらく画面を見ていた。
もう話す必はない。
本来ならそれで終わりだった。
でもしだけ考えて、く返信した。
『話だけなら、丈夫です』
その10分、啓介から話がかかってきた。
着信画面に表示された名を見ても、胸はもうほとんどかなかった。
なら呼吸が浅くなっていたとう。
でも今は違った。
私は通話ボタンを押した。
「もしもし」
しの沈黙の、啓介の声が聞こえた。
「ゆか」
それは聞いたことがないくらいい声だった。
「何?」
またしがあった。
「退院した」
「そう」
「1だった」
私は何も言わなかった。
「術に入る、護師にご族の方はって聞かれた」
彼は言葉を紡ぐ。
「いませんって答えた」
声がそこでし詰まった。
「終わって目が覚めても、誰もいなかった」
「横の子、空だった」
私は窓のを見た。
向かいのアパートのかりが1つだけついていた。
「みますかって護師さんが聞いてくれて、それだけだった」
「退院の続きも1でやった。荷物持って、タクシー呼んでに帰った」
啓介の声は、しずつ崩れていった。
「帰ったら真っ暗で、蔵庫けても何もなかった」
彼は絞りす。
「とりあえずなんかおうとって凍庫も見たけど、何も入ってなくて。そこで……」
私はさく目を閉じた。
唐揚げ。
かす。
あったっけ。
あのの台所の音が、ほんの瞬だけ蘇った。
「そのに、やっとった」
い沈黙の、啓介が言った。