"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第14話
母のに持っていくたびに、母は何も聞かずに受け取ってくれた。
ダンボールを抱えて玄関につと、黙って受け取って廊の奥へ置く。
それだけだった。
その無言がありがたかった。
夜、優馬が寝た、私はまたノートをいた。
次に必なのは「いつか」だった。
どの順番で、何を済ませるかだった。
泣いて終わりにはしない。
それはもう決というより予定にかった。
私はその夜、ページの端にさくいた。
『く』
それだけで分だった。
それから私は、泣く代わりにいた。
でも派にはかない。
気に荷物をまとめて、勢いでをるような真似はしない。
そんなことをしたら、優馬がになる。
しずつでよかった。
静かに確実に自分のを作ればいい。
そのも啓介は何も気づかなかった。
本棚の隙がし増えても。
洗面台ののタオルが減っても。
押入れの奥の箱が1つ消えても。
本当に何1つ。
ある、私が洗面所で優馬のパジャマを畳んでいると、啓介がリビングから声をかけてきた。
「ねえ。俺のグレーの靴どこ?」
「引きしのから2段目」
私が答える。
「見たけど、ない」
私はを止めて、洗面所からた。
引きしをける。
グレーの靴は、1番にあった。
「これ」
「ああ、あったんだ」
見えていないのではなく、探していないのだとった。
目のにあっても自分で見つける気がない。
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誰かが差ししてくれる提できている。
その誰かが、ずっと私だった。
別のの朝。
保育園へくに、優馬が靴箱ので言った。
「きつい」
しゃがんでみると、つま先がし当たっていた。
はまたきくなっていた。
私はそのの仕事帰りに、靴を買って帰った。
に着いて箱をけると、優馬は嬉しそうにしい靴を履いた。
「見て、ぴったり」
「本当だ。りやすい?」
「うん」
その様子を横目で見ながら、啓介はソファーでスマートフォンを見ていた。
「靴買ったな」
「うん。きつくなってたから」
「ああ、そうなんだ」
それだけだった。
サイズはいくつか。
の靴はいつからきつかったのか。
保育園で転ばないか。
そういうことは1つも聞かなかった。
このにとって子供の成は、目のを通りすぎる景みたいなものなのだとった。
見えてはいる。
でも止まって確かめようとはしない。
別のの夕飯で、啓介が噌汁をんで言った。
「これ、ちょっとくない?噌切れかけてるから、買っとけばいいのに」
買い物にくのは私だった。
仕事帰りに優馬を連れて、い袋を持って帰るのも。
でも啓介は、りないことだけをにした。
ある夜、啓介が珍しくく帰ってきた。
ネクタイを緩めながら、し得そうに言った。
「み、断ってきた」
「そう」
「珍しいだろ。気い使ってんだよ、俺も」
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私はまな板ので、ニンジンを切るを止めなかった。
「そうなんだ」
「その反応何?別にもっと、ありがとうとかないの?」
その言葉に、私はようやくを止めた。
「み会を1回断っただけでは、そういうのにお礼がいるんだ」
「別にそういうじゃなくて、気を使ってるって話」
「そう」
私は包丁を置いた。
「じゃあ、優馬のお呂お願いできる?今」
「今しかないでしょ。もう8だから」
「ちょっと待って。これ返信してから」
10分経っても、15分経ってもかなかった。
私は結局、自分で優馬を呂に入れた。
髪を乾かして、パジャマを着せて、歯磨きをさせる。
いつもの流れだった。
リビングへ戻ると、啓介がソファーから言った。
「あ、入れてくれたの?サンキュー」
私はその顔を瞬だけ見た。
サンキュー。
自分がやるはずだったことを、妻が代わりにやったにてくる言葉がそれだった。
み会を1回断っただけで謝を求められる。
父親として当たりのこともしていないのに、し嫌を取れば分だとってる。
そういうが、1番しんどい。
その夜、私はまたノートをいた。
む所、必な続き、相談先、引っ越しの期。
1つずつ埋まっていくたびに、気持ちは静かになっていった。
方で啓介は、相変わらず何も気づかなかった。
それが、このの答えだった。
決定打になったのは、特別な事件じゃなかった。
鳴り声でもなかったし、決定な裏切りの瞬を目撃したわけでもなかった。