みかん小説
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"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第7話

「鶏肉、まだあったよな」

ビニール袋をかき分ける音。

「あった。凍の鶏もも、2枚ある」

振り返った顔はるかった。

「今、唐揚げいける?」

退院した妻が、痛みをこらえてやっとがったばかりなのに。

唐揚げだった。

帰ってきて最初に聞いた言葉が、唐揚げだった。

「ちょっと、疲れた」

私が絞りすように言う。

「あ、そう」

彼はがっかりしたように言う。

「じゃあ唐揚げはにして、今はうどんでいいや。凍のやつあるし」

もう次の献を考えている。

このにとって、今事なのは私の体じゃない。

今夜、自分が何をべるかだった。

「ネギ、ある?」

彼は棚の奥を指さした。

「ネギは、蔵庫の野菜

私が答える。

「あ、あった。これ何?」

「ネギ」

ネギ。どのくらい切ればいい?」

「好きなだけ、いいよ」

「麺つゆ、これ?」

彼はボトルを持ちげて、ラベルを見ている。

「それ何倍にめるの?」

「裏にいてある」

「あ、本当だ」

軽い声で笑った。

あったっけ?」

私は黙って、棚からを取って渡した。

私はそのったまま、啓介の質問に1つずつ答えていた。

自分のの台所なのに、何がどこにあるのからない。

ろうともしてこなかった。

自分で探すより、私に聞いた方がいとっている。

私が横にいる限り、このは覚えない。

「ありがとう」

いつもの声だった。

退院したばかりの妻が隣にっていることのを、このは考えない。

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がないことは分かっていた。

でも、悪がないことと優しさがあることは全く違う。

その、スマートフォンが鳴った。

母からだった。

『無事に着いた?』

『今のお迎えも私がくから、ゆかはかなくていいよ』

私は画面を見たまま、さく息を吐いた。

啓介はその内容を聞いても、ほっとしたように「ああ、助かる」と言うだけだった。

「自分がこうか」の言もない。

「今くらい迎えにく」の発もない。

母がくことを、最初から当然だとっている。

こので私のことを本当に気にかけているのは、ここにいない母だけだった。

退院から数週が過ぎた。

傷の痛みは、しずつ引いていた。

でも、腕を肩よりげると、胸の奥がまだ突っ張った。

洗濯物をい位置の物干しから取るは、無識にばかり使っていた。

買い物袋も、いものはなるべく片側に寄せないように持った。

見た目には元気そうでも、体の方はまだ元には戻っていなかった。

それでも、活は止まらない。

朝、優馬を起こす。

着替えをさせる。

ご飯をべさせて、保育園へ送る。

仕事へって、帰りにスーパーへ寄って夕飯を作る。

呂に入れて、寝かしつける。

私はまた、元の活に戻ったように見えていた。

見えていただけだった。

ある午

優馬が保育園にっているに、リビングで洗濯物を畳んでいた。

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ラグののように積んだを、1枚ずつに取る。

優馬のさなTシャツ。

私の代わりのないワイシャツ。

を揃え、タオルをつ折りにして、順番にねていく。

に、ソファーに置きっぱなしになっていた啓介のジャケットをに取った。

ハンガーにかけるに、いつもの癖でポケットを探る。

ティッシュや銭、レシートが入ったままになっていることがよくあるからだ。

指先に、が触れた。

さなだった。

最初は、コンビニのレシートか何かだとった。

でも、広げた瞬、目が止まった。

見慣れないゴルフの名が印字されている。

1800円、ドリンク代600円。

そして、付。

私の術のだった。

が止まった。

リビングの計の秒針だけが、やけにきく聞こえた。

私はもうを見た。

名を見た。

額を見た。

それから、付を見た。

1117

違いじゃなかった。

私が術を受けただった。

その瞬にあのの朝が、気に戻ってきた。

井。

点滴のたさ。

母のの温度。

ストレッチャーの揺れ。

丈夫。私がいるから」と言ってくれた母の声。

そして。

来なかった夫。

啓介はあの、どうしてもせない仕事が入ったと言った。

私は信じた。

疑うことすらしなかった。

夫が妻の乳がん術のに、嘘をつくなんて考えもしなかったからだ。

でも。

これは仕事じゃない。

ゴルフ、ランチ、ドリンク。

仕事じゃない。

私はしばらく、そのレシートを持ったまま座り込んでいた。

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