"四十七万円を母に送った夫への逆襲" 第9話
は目を見いた。
まるで私を初めて見たかのような顔をした。
普段は数のない妻が、無駄のない言葉で彼を完璧に追い詰めたことに驚いたのだろう。
部の空気はく淀んだ。
もなく、ただ体温と苛ちだけが充満していた。
しばらくして、は財布から現を取りした。
数え始めた。
違いがないか、元を暗がりで確認しながら何度も数え直している。
彼が自分の権利の証だと誇っていたお遣いの3万円。
それは、実際の活費のをにすると、まるで激流のに置かれたさな溜まりのようだった。
彼は声で忌々しげに何かを呟いた。
汚い言葉はみ込んで、靴を履いててった。
扉が閉まる、捨て台のように言った。
「こんなことして、面倒を増やしてるだけだぞ」
私は端末のかりがついたままの子に座った。
微かな声で答えた。
「面倒なのは、に背負ってもらっているだけなのに自分がの主だとい込んでいるのよ」
扉が閉まり、再び部は暗に包まれた。
寝に入った。
引きしから用のさなロウソクを取りしてを灯した。
淡い黄のが、机の片隅だけを照らしている。
自分が残酷だとはわない。
ただ1つ、はっきりと分かったことがある。
このまま都よく沈黙を続ければ、私は自分で買ったこののでただのになってしまう。
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けはのためならずと言う。
だがそれは、自分の優しさが相につけ込まれないに限るのだ。
翌朝。
の気は復旧していた。
がいつ支払いにったのかは聞かなかった。
彼も何も言わなかった。
ただ眠症にでもなったかのように、部のをうろうろと歩き回っていた。
眉にシワを寄せている。
綺麗事をにすることは、すっかりなくなっていた。
私はいつも通り勤した。
途でよくく端のでおにぎりを買った。
歩きながら、最の議な覚について考えた。
きているし、息もしているし、仕事もしている。
ただ突然、自分がこれまでの見えない借を肩代わりしてきたことに気づいてしまったのだ。
午10頃。
私が契約の確認をしていると、携帯話が鳴った。
画面に表示された番号の最初の桁を見ただけで、すぐに分かった。
野の実からだ。
私は通話のボタンを押した。
「はい。みさきです」
話の向こうからは、挨拶もなしに義母の記憶の声が響いた。
を抑えているようだが、い刃物のような声だった。
「みさき、は今送りを済ませたと言っていたけど、どうしてりないんだい」
私は作業のを止めた。
確認のためにもう度尋ねた。
「りないとは、どういうことですか?」
「おがりないんだよ」
義母は声を荒げた。
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「47万円ぽっちで何ができるって言うんだい」
彼女は満をぶちまける。
「こっちは薬代に法事、々と物入りなんだ」
義母は決めつけるように言った。
「は料ががったと言っていたのに、これしか送ってこない」
義母は私を責めてる。
「残りはあんたが管理してるんだろう」
そこまで聞いて、全てを理解した。
向こうの物語のでは、私はおを握りしめている悪役なのだ。
ただ預かっているのではなく、疑いの目を向けられる対象としての私。
私は息を吸った。
あえて静かで丁寧な調を保ったまま答えた。
「お義母様、さんの与は彼自が送額を決めています」
私は事実を告げた。
「私は切干渉しておりません」
義母はで笑った。
「干渉してないのに、りないなんてことがあるかい?」
彼女は凄むように言う。
「はっきり言うけどね。私ももうだ」
義母は言葉を続ける。
「事を荒てたくはないが、息子の稼ぎは親の面倒を見るためのものだよ」
彼女は吐き捨てるように言った。
「都会のみたいに、細かく計算してし惜しみをするんじゃないよ」
都会の計算という言葉。
それは見軽いようでいて、実はの自尊をくえぐる言葉だ。
私が打算でケチで、本来自分のものにならないはずのおを抱え込んでいる。
そういう暗黙の非難だった。
私は言い返さず、ただ事実を確認した。
「おいくらしているのか、教えていただけますか?」