"四十七万円を母に送った夫への逆襲" 第4話
まるでぶつかりどころのないりを、物にぶつけているかのようだった。
私は扉をけた。
へる直に、気の話でもするように軽く言い残した。
「戸棚に即席麺と卵があるわ」
私は彼に背を向けたまま言った。
「べたければ、自分で作ってね」
は嫌に言い捨てた。
「分かったよ」
私は扉を閉めた。
昇に乗り、階数を示す数字ががっていくのを見つめた。
それでも、私のはしも波たなかった。
ると泣き喚いたり、満をにしたりする女性もいる。
だが私は、自分の境界線を侵されたとった、ただ1つの方法を取る。
基準を変えるのだ。
綺麗事を言いたいには、その綺麗事のできてもらえばいい。
私は職のくにある、ちい蕎麦にち寄った。
温かい汁のりがよい。
私は朝定と、に温かいお茶を頼んだ。
きっちりと自分の分だけを支払う。
の丈にわせるという言葉をいした。
事のことのようだが、実はそのものの教訓だ。
相が美しい部分だけを自分の皿に取ろうとするなら、どうするか。
こちらがずっと仕をしてやる義理はないのだ。
会社に着くと、私は端末をちげた。
仕事の予定を確認する。
隣の席のゆり先輩が、く社した私を見て笑いかけた。
「みさきちゃん、今なんだかすっきりした顔してるね」
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先輩は首を傾げた。
「何か良いことあった?」
私もよく微笑んだ。
「ええ、しの回りの理をしたんです」
私はお茶をみ干した。
そのもなく、私の携帯話が文通信の通音を鳴らした。
からだ。
画面を見ると、りが滲む文面だった。
『お、どういうつもりだ?』
『朝飯を作るがなくて、遅刻しそうになったじゃないか』
私は読んだが、すぐには返信しなかった。
5分、また通が来た。
『夫婦なのにやりすぎだろう』
『母さんに送するのは親孝だと言ったはずだ』
私は携帯話を裏返した。
机に置き、仕事に戻った。
こういう言葉の裏は読めている。
もしここでに返信すればどうなるか。
彼が用した「君は理尽だ」という罠に、自らを踏み入れることになる。
お昼、私は端末の計簿をいた。
毎固定でかかる費用を記録しておくのは、私の習慣だ。
ケチだからではない。
おは入ってくるは遅いが、ていくは瞬だからだ。
賃、費、管理費、分割払い。
これらの数字は自然に湧いてくるものではない。
誰かが自分の負担を故に軽くしようとすれば、そのみはどうなるか。
もう1の方にくのしかかる。
そして世は、荷を背負わされた側を「よくできた妻」と呼んで美化するのだ。
お昼は社員堂で済ませた。
豪華ではないが、栄養の釣りいは取れている。
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し歩いて消化を助け、再び席に戻った。
また携帯話が鳴った。
今度は話だった。
画面をしばらく見つめた。
それから通話のボタンを押した。
「どうしたの?」
私は静かに尋ねた。
は努めて静を装うような、い声で言った。
「今はく帰って、夕飯を作ってくれないか?」
彼は咳払いをした。
「俺は夜接待があるから遅くなるんだ」
私はごく単純な事実を問い返した。
「あなたは元に3万円を残しているんでしょう」
私は淡々と言った。
「どうしてお弁当でも頼まないの」
は瞬、沈黙した。
歯をい縛るように言った。
「君はすぐに、おの話を持ちすな」
私の声は変わらず平坦だった。
「おの話を持ちしているわけじゃないわ」
私は画面の計簿を見つめた。
「ただいさせているだけ」
私の声には乗っていない。
「あなたが言った、誰が管理しても同じという規則が、あなたの望み通りにいているだけよ」
は粗い息を吐いた。
乱暴に通話を切る音がに響いた。
そのの夕方。
私は定で仕事を終えたが、まっすぐには帰らなかった。
料品に寄り、果物と牛乳を買った。
全て私自のためのものであり、の誰のためでもない。
分譲宅に戻った。
扉をけると、はすでに帰宅していた。
彼は子に座り、眉にシワを寄せていた。
目のの机には、べかけの即席麺が置かれている。
汁はすっかりめて濁っていた。