"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第26話
勇気はまたを澄ませた。
それから頷いた。
「し分かります」
現の職たちが健造に気づき、を止めてをげた。
健造はそのに頷き返しながら、の奥へ歩いた。
勇気は隣を歩きながら、械を順番に見ていった。
旋盤。
フライス盤。
プレス。
それぞれの械のでしずつち止まり、きを目で追う。
健造は急かさなかった。
勇気が見終わるまで、隣でじっと待った。
の奥まで来たところに、古い械が台あった。
現役の械だったが、のものより季が入っている。
装のペンキは何度も塗り直した跡がある。
各所に職のによる修理の痕跡があった。
勇気はその械ので止まった。
「これは創業当からある械だ」
健造が説する。
「私の父が使った。幸介も触った」
勇気は械を見つめた。
それからを伸ばしかけて、止まった。
「触っていいですか?」
「どうぞ」
勇気は械の側面にを当てた。
稼働の械は、刻みに振している。
その振が、のひらから腕へ伝わった。
勇気は目を閉じた。
何かをじようとしている。
健造はその様子を黙って見ていた。
幸介が初めてこの械に触ったも、まったく同じように目を閉じた。
血というのは議なものだと健造はった。
教えなくても伝わるものがある。
言葉にならないものが、のひらからのひらへ、を超えて渡っていく。
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「何がじられますか?」
健造が静かに聞いた。
勇気はしばらく答えなかった。
目を閉じたまま、振をじ続けている。
それから目をけて言った。
「温かいです。属なのに、温かい」
健造はく頷いた。
「それが、この仕事の本質だ」
その、健造は勇気をの職のそばに連れてった。
で最も古参の職。
70い齢になっても、現をれない男だった。
「しばらく横で見ていなさい」
健造が言うと、勇気は職の隣にった。
職は何も言わず、自分の作業を続けた。
属を削る。
測る。
確かめる。
また削る。
その繰り返しのに、からは分からない度な判断が無数に含まれていた。
勇気は黙って見ていた。
30分、1。
かずにじっと見ていた。
やがて職がを止め、勇気を見た。
「飽きないか?」
「飽きないです」
勇気が即座に答えた。
「なぜ、毎回測るんですか?削るたびに」
職はしの、勇気を見た。
それからぶっきらぼうに答えた。
「削ったと削るでは、もう違うものだからだ」
職は属部品を指さす。
「同じものを見ているようで、毎回初めて見ている」
勇気はその答えを聞いて、く頷いた。
「帳にきたいです」
勇気は言った。
職は健造を見た。
健造が頷く。
職は「きなさい」と言った。
勇気は着の内側から帳を取りした。
幸介が使っていた古い帳だった。
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ページをくと、幸介の字がびっしりと並んでいる。
勇気は空のページを探した。
ろの方に、いくつかのいページが残っていた。
勇気はそこに、職が言った言葉をいた。
『削ったと削るでは、もう違うものだ。同じものを見ているようで、毎回初めて見ている。』
き終えて、勇気はその文字を見た。
幸介の字の隣に、勇気の字が並んだ。
似ていた。
完全には同じではなかったが、どこかに同じ癖がある。
「7」の横棒に入るさな羽。
それだけはまったく同じだった。
勇気はそれに気づいたかどうか、顔にはさなかった。
しかし帳を閉じる、しだけく表にを当てていた。
昼過ぎにのにた。
入りくの当たりのいい所に、あかりが座っていた。
浜田が隣で微笑んでいる。
は空を見ていた。
桜ののがに揺れている。
にいピンクのびらがいくつか、に流れていった。
勇気はあかりのそばに歩いていき、隣のい縁に腰かけた。
あかりは勇気を見て尋ねた。
「楽しかった?」
「楽しかったです」
勇気は真っ直ぐに答えた。
「何を学んだの?」
勇気はし考えてから言った。
「毎回初めて見ることが事だということです」
あかりはその答えを聞いて、クスリと笑った。
「幸介さんみたいなことを言う」
あかりは桜を見げる。
「お父さんもそういう考え方をするでした」
勇気はあかりを見た。
「教えてもらっていたんですか?で」