"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第21話
「ってらっしゃい」
は朝のいに発した。
速を使い、途で度休憩を挟みながら3ほどののりだ。
内はほとんど無言だった。
勇気は窓のを見続けている。
にづくにつれて、景がしずつ変わっていった。
建物の密度が減り、田畑が増える。
の稜線がに迫ってきた。
勇気はその変化を目で追いながら、を膝のに置いていた。
そのが、の振にわせてさくいている。
何かを数えるような、あるいは何かを確かめるような指先のきだった。
田はルームミラーで勇気を見た。
そして健造を見る。
健造はを向いていた。
田はミラーから目を戻し、ハンドルを握り続けた。
病院はさな町の部からしれた所にあった。
い壁の、こぢんまりとした建物だった。
駐にを止め、は受付に向かう。
担当の護師がてきて、奥へと案内された。
廊を歩きながら、勇気は元を見ていた。
廊のの継ぎ目を、無識に踏まないように歩いている。
病院特の消毒液の匂いが漂っていた。
案内されたのは、廊の番奥の部だった。
扉ので護師が「しだけお待ちください」と言い、に入った。
分ほどしててきて、「どうぞ」と扉をけた。
田はそのに残った。
健造と勇気だけが、病のに入った。
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病は4部ではなく、さな個だった。
窓からいのが差し込んでいる。
ベッドにの女性が横になっていた。
35歳とはえないほど、頬がこけている。
髪は束ねられ、首元まで毛布が引きげられていた。
しかし、目はいていた。
扉がく音で、顔をそちらに向けた。
入ってきたを見る。
健造を見た。
そして、勇気を見た。
その瞬、女性の目に涙が溢れた。
声はなかった。
せなかったのかもしれない。
ただ目だけが激しくいた。
勇気を見て、健造を見て、また勇気に戻る。
勇気は扉のくにったまま、ベッドの女性を見ていた。
い、ただ見つめていた。
それからゆっくりと歩き始めた。
ベッドのそばまで来て、ち止まる。
女性が震えるを伸ばした。
毛布のにたは細く、指先が微かに震えている。
勇気はそのを見た。
それから自分のを伸ばし、その細いを両で包み込んだ。
さなが、もっとさくなったを包む。
「お母さん」
勇気が言った。
声は、いつもの平坦な声ではなかった。
健造も田も初めて聞くような、震える声だった。
女性の目から涙が止めどなく流れた。
声はない。
ただ涙だけが頬を伝って流れる。
勇気はを握ったまま、ベッドの縁に静かに座った。
はしばらくそのままの姿勢でいた。
健造は部の入りくにったままだった。
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へめなかった。
この所は、この母と子のためのものだ。
健造は女性を見た。
あかりを見た。
幸介が選んだを。
10、命を削りながら息子を守り抜いてきたを。
健造の目がくなった。
耐えようとしたが、こらえきれなかった。
健造は歩にた。
それからゆっくりと腰を折った。
く、く、をげた。
72きてきて、これほどくをげたことがあっただろうか。
健造はげながらそうった。
あかりは泣きながら、をげる健造を見ていた。
声がない代わりに、首を横に振った。
謝らないでほしいというなのか。
自分こそ申し訳なかったというなのか。
健造には判断できなかった。
しかし、健造はをげなかった。
げることができなかった。
廊で待っている田には、この部ので何が起きているかは見えなかった。
ただ、い沈黙だけが廊まで伝わってくる。
田は壁に背を預け、井を見げた。
病院の廊は静かだった。
くで誰かが咳をする音がする。
それ以は何も聞こえなかった。
あかりが初めて声をしたのは、健造がをげてから10分ほど経っただった。
声はかすれていて、とてもさかった。
しかし、言葉ははっきりとしていた。
「勇気は、元気でしたか?」
健造はあかりの目を見て、力く答えた。
「元気だった。
それ以だった」
あかりは勇気を見た。
勇気はまだあかりのを握ったまま、ベッドの縁に座っている。