"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第18話
悟はったまま勇気を見ろしていた。
「子供の記憶違いでしょう」
悟の声が初めてずった。
「あの類を瞬見ただけで、正確に覚えられるわけがない」
「違います」
勇気は悟を見据えて言い返した。
「あのページのに、付のスタンプがありました」
勇気は微も揺るがない。
「との数字は読めましたが、の部分がし滲んでいて、最の桁だけ分かりませんでした」
勇気はさらに付け加えた。
「スタンプのは、青でした。インクがしくなっていたので、スタンプが古いかインクが減っていたといます」
悟の顔から、完全に穏やかさが消えった。
勇気が言った細部が、あまりにも正確すぎた。
瞬見ただけで覚えられるはずがないという反論。
それが、その細部の正確さによって完全に根拠を失った。
経理担当の役員がちがった。
「会。こので確認させていただいてよろしいでしょうか?」
声が震えている。
「今、勇気さんが挙げた数字と品目について、社内の調達記録と照したいといます」
健造はく頷いた。
「お願いします」
役員はタブレットを激しく操作し始めた。
別の役員が元のノートパソコンをく。
会議のに、キーボードを叩く音とページをめくる音がなった。
その、勇気はったままだった。
帳を両で持ち、テーブルの端に静かにっている。
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悟はその様子を見ていた。
顔から表が抜け落ちていた。
やがて、役員のが健造に向かって報告した。
「会。品目の部について、記録との乖が確認されました」
役員は顔面を蒼にして続ける。
「額の差異についてはさらに詳細な調査が必ですが、勇気さんが挙げた数字は、概ね社内記録としています」
部が完全に静まり返った。
そののような静けさので、悟が初めてテーブルにをついた。
崩れ落ちそうな体を支えるような作だった。
健造は悟を見た。
72ので培った目が、今の悟の内側を読んでいる。
追い詰められたの、最の粘りのような何かがまだそこにあった。
しかし、それがいつまでも続かないことも、健造には分かっていた。
会議の扉がノックされた。
田が素くって扉をける。
廊に、担当の私刑事がっていた。
田は刑事とく言葉を交わした。
それから会議の全員に向かって、きな声で宣言した。
「警察の方がいらっしゃっています」
田の声が響き渡る。
「堀田悟常務に対する逮捕状がました」
役員たちが息を呑む。
「勇気さんの誘拐に関わった件です。それに加え……」
田は度言葉を切った。
「捜査の過程で、10の交通事故との関連についてたな証拠が発見されたとのことです」
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田は悟を真っ直ぐに見た。
「幸介さんの両の事故に関する、たな証言です」
会議が凍りついた。
役員たちの顔が、残らず悟に向いた。
悟はったまま、ピクリともかなかった。
数秒、10秒。
それ以のが経った。
刑事が会議に踏み込んできた。
悟の名を呼ぶ。
錠が取りされた。
カチャリという属音が、会議のでさく、しかし残酷に響いた。
悟は錠をかけられる、言も発しなかった。
連される途、扉ので悟は度だけ振り返った。
その目が健造を見た。
健造は悟を無言で見返した。
どちらも何も言わなかった。
扉が閉まる。
廊を歩く複数の音がざかり、やがて聞こえなくなった。
会議に残された役員たちは、しばらく誰もをけなかった。
窓ので、いが切れ始めていた。
いが会議のテーブルのに差し込んでくる。
勇気はその、ずっとテーブルの端にっていた。
帳を胸に抱きかかえている。
部の劇な変化を、静かに見ていた。
健造がちがった。
勇気のそばにゆっくりと歩み寄る。
72歳の体が、10歳の子供の横に並んでった。
それだけで、会議の全員にこれから何が続くかが伝わった。
健造は役員たちを見渡し、静かに、そして力く言った。
「今の議事をもって、勇気を堀田の正式な継者として役員会に通します」
健造の宣言に、反対する声はない。
「続きは順を追ってめます。詳細は、面でお伝えします」