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"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第12話

しかし、その笑みは以のように滑らかではなかった。引きつっていた。

「面い話ですね。でも全部推測でしょう。証拠はない」

勇気は歩も引かなかった。

「あなたののシートに、朱肉の跡がついているかもしれません」

勇気が告げた言葉に、悟の肩がわずかに揺れた。

「印鑑を持ち運ぶ、朱肉がし滲むことがあります。革のシートは落ちにくい」

悟の笑みが、瞬だけ完全に固まった。

その瞬の張りを、部の全員が目撃した。

健造が静かにがった。

72歳の体が、ゆっくりと、しかし確かな威圧を持ってがる。

「悟」

呼びかけはく、酷だった。

「今からこの邸宅への入りを断る」

健造は悟を見ろした。

「会社の件については、改めて話しを設ける。今はってくれ」

悟は数秒つしなかった。

それからゆっくりとがった。

フォルダーをに取る。

度だけ、勇気を睨みつけた。

その目に浮かんでいた憎悪を、勇気は正確に読み取った。

しかし、勇気の表しも変わらなかった。

ただ静かに、悟が部ていくのを見届けていた。

革靴の音が廊ざかっていく。

玄関扉がい音をてて閉まる。

のエンジン音が響き、へ消えていった。

応接に残ったは、しばらく誰もかなかった。

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浜田が、こらえていた息をさくく吐きした。

は窓のを確認してから、健造に線を向けた。

健造はソファに戻って座っている。

テーブルのの印鑑をに取っていた。

そのが、微かに震えている。

齢のせいではなかった。

「よくやった」

健造は印鑑から目をげ、勇気に向かって言った。

勇気は黙って頷いた。

それだけだった。

謝を求める様子も、得げな様子もない。

ただ、すべきことをしたという顔だった。

しかし、悟が邸宅を、その目のにあったのは敗だけではなかった。

追い詰められたが放つ、特の危険ながあった。

部座席に乗り込んだ悟は、しばらく窓のを睨みつけていた。

それから携帯話を取りす。

い番号を押した。

ると、悟はい声で命令した。

「Aの件、倒しにする」

悟は酷に告げた。

の午、邸宅の庭にを入れてくれ」

悟は目を細める。

「あの子供を連れす。騒ぎにはしなくていい。ただし、確実に」

悟は話を切り、携帯を膝のに置いた。

窓に映る並みを見ながら、悟はで計算を回していた。

健造の傍に勇気がいる限り、計画はまない。

しかし、勇気がいなくなれば健造はけなくなる。

老いた体に、孫を質にされる恐怖。

それだけあれば、印鑑つ押させることなど造作もない。

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悟はそう確信していた。

自分が追い詰められるほど、より極端な段にる。

それが悟というが、誰にも気づかれることなく積みねてきた習性だった。

2の午

邸宅の庭は静かだった。

勇気はいつものように、縁に沿ってを並べている。

隔に、丁寧に。

浜田は台所で夕の準備をしていた。

包丁がまな板を叩く音がさく響く。

は執務で、会社との話対応に追われていた。

健造は斎で、分類を読んでいる。

邸宅の裏垣に、の気配がづいていた。

しかし、そのの午の邸宅は、いつもと変わらない午に見えた。

最初の異変に気づいたのは、浜田だった。

台所の窓から庭が見える。

いつもなら、を並べている勇気の姿が見えるはずの所だ。

そこに、誰もいなかった。

浜田は包丁を持つを止めた。

目を凝らし、もう度確認する。

やはりいない。

浜田はエプロンでを拭きながら、慌てて廊た。

庭に面したきな窓から確認する。

に、が途まで並べられたまま残されていた。

が、列かられた位置に転がっている。

浜田の体に、嫌な予った。

む。

の声が聞こえる執務の扉を、く叩いた。

が怪訝な顔でてきた瞬、浜田は叫ぶように言った。

「勇気くんが、庭にいません」

の顔瞬で変わった。

に持っていた話を引に切る。

すぐに健造の斎へ向かった。

健造はその報告を聞いた類からゆっくりと目をげた。

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