"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第3話
最寄り駅から徒歩10分ほどれた、さな公園。
自販売の裏側にある狭い空に、勇気は体を縮めるようにして座っていた。
膝のに古びた帳を広げている。
勇気はそれをじっと見つめていた。
帳の表は擦り切れて、が判別できないほどになっている。
角は何度も折り曲げられた跡があり、く変していた。
田がづく気配に気づいた。
勇気は素くその帳を着の内側にしまい込んだ。
ちがりながら、警戒するような目を田に向ける。
しかし、どこか諦めたようなも混じっていた。
田はゆっくりと膝をついた。
勇気と目線のさをわせる。
「会が、直接お礼を言いたいと言っている」
田は穏やかな声で言った。
「怖いことは何もない」
勇気はしばらく、田の顔を見つめていた。
田は胸ポケットから名刺を取りし、勇気に差しした。
勇気は名刺を受け取った。
文字を読み、また田の顔を見る。
その、秒。
子供にしては異様にい、品定めのような沈黙だった。
やがて、勇気はをいた。
「わかりました」
い返事だった。
ちがりながら、勇気はもう度、着の胸のあたりをでそっと押さえた。
内側に切なものがあることを確かめるような、無識の作だった。
田はその仕を見た。
だが、何も言わなかった。
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に乗り込む直、勇気は公園ので瞬ち止まった。
元に、でばされてきた落ち葉が3枚、規則に落ちていた。
勇気はそれを見ろした。
何かを考えるでもなく、ただ自然にかがみ込む。
3枚の葉を拾いげ、面のに並べ直した。
3枚の葉が、完璧に平に、等隔に1本の線を描くように列する。
それは5秒とかからない、息をするような自然な作だった。
田は黙ってそれを見ていた。
なぜかわからなかったが、その作が田の胸の奥のどこかを静かに揺らした。
ので何かが繋がりかけて、しかし繋がらなかった。
田は何も言わず、のドアをけた。
黒いセダンは夕暮れのを抜けた。
京郊の閑静な宅をり抜け、堀田の邸宅へと向かう。
部座席で、勇気はずっと窓のを見ていた。
怯える様子もなく、期待する様子もない。
ただ静かに流れる景を眺めている。
その横顔には、この齢の子供が持つはずの柔らかさがなかった。
代わりに、いをかけてゆっくりと形成された、ある種の静けさがあった。
田はルームミラー越しに、その横顔を観察した。
どこかで見たことがある顔だった。
誰かに、確かに似ている。
しかし、その誰かが誰なのか、田にはまだいせなかった。
は夜のをり続けた。
勇気は度もろを振り返らなかった。
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邸宅のをくぐったも、勇気は何も言わなかった。
驚きの声も、嘆の息も漏らさなかった。
広い畳の寄せがあり、入れのき届いた池がある。
玄関灯に照らされたなの扉があった。
それだけの景をにしても、勇気の表はまったく変わらない。
ただ静かに周囲を見渡している。
まるで図をのに描き込むような目つきで、邸宅の構造を確認していた。
田はその様子を横目で見ながら、玄関の扉をけた。
迎えた政婦の浜田は、だらけの子供を見て瞬表を固めた。
しかし、田の線に気づいて、すぐに柔らかい笑顔を作った。
浜田は優しく声をかけた。
「さあ、まずお呂に入りましょうね」
勇気は返事をしなかった。
しかし、しく浜田のについていった。
廊を歩きながら、勇気はを着の胸元に当て続けていた。
に何かある。
田はまた、その仕を確認した。
浜田が清潔な着替えをタンスのに畳んで置いた。
呂の準備をしている、勇気は部の隅にって待っていた。
浜田が部をていく。
勇気はタンスのの着替えに目を向けた。
シャツとズボンが、浜田が丁寧に畳んでねた状態で置いてある。
勇気はそれをしばらく見ていた。
やがてそっとを伸ばし、畳まれた類を度持ちげた。
そして、また置き直した。
シャツとズボンが完璧に平になるように。
端と端が狂いなく揃うように。
浜田が戻ってきた、着替えは彼女が置いたよりも然と並んでいた。