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"博士になった息子を「返せ」と言われた夜" 第3話

がテーブルを叩いた。

「いつまで被害者ぶるつもりだ。おにも得るものはあっただろう。母親になれたんだから」

「あなたは、があなたの子だとりながら、私に度も話さなかった」

「話したら、素直に育てなかっただろう」

「当然でしょう!」

ひよりが声をげたのは、結婚以来初めてだった。

親戚たちが息をのむ。正も驚いたように目を見いたが、すぐに険しい表へ戻った。

「誰のおかげで活できたとっている。俺が会社をきくし、このを建て、おを何自由なく暮らさせたんだ」

「私はあなたの会社で、無同然で経理を伝いました。事も育児もでしてきました」

「それが妻の役目だろう」

で笑い、鞄から婚届を取りした。

「ちょうどいい会だ。俺は子と再婚する。婚届には署名してもらう」

がひよりのへ滑ってきた。

「それと、以内にこのていけ。このは俺が結婚から持っていたものだ。は俺たちと暮らす。おが持っていけるのは、自分の用品だけだ」

?」

分だろう。、俺ので暮らせたんだ。それ以、何を望む」

ひよりは婚届を見つめた。

料理の匂いが漂う部で、誰も箸をかさなかった。の好物を並べた卓が、突然ひよりのを裁く所になっていた。

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「母さん」

づいてきた。

ひよりは反射に首を振った。自分が泣けば、この子を困らせてしまう。にとっても、まれを突然らされた苦しい夜なのだ。

丈夫よ」

そう言おうとしたが、声にならなかった。

から力が抜け、ひよりはへ膝をついた。慌てて伸ばしたが祝い膳の端に触れ、鉢が落ちた。煮物の汁が畳へ広がった。

「ほらね」

子がさく笑った。

「こういうまでげさなの。、もういいでしょう。育ててもらったことには私からもお礼を言うわ」

子はひよりを見ろした。

「ご苦労さまでした。これからは本当の母親に返してください」

子のを通り過ぎ、ひよりのそばへしゃがんだ。

畳についたひよりのを取り、肩を支える。の膝についた埃を丁寧に払うと、幼い頃とは逆に、息子が母親をたせた。

「母さん、背筋を伸ばして」

の声は静かだった。

「恥ずかしいことをしたのは、母さんじゃない」

、今の話を理解しているのか」

が苛った声をげた。

「ひよりはおの実の母親じゃない。おを産んだのは子だ」

はひよりを子へ座らせてから、ゆっくりと父親へ向き直った。取り乱してはいなかったが、その目にはひよりが見たことのないたさがあった。

「産んだが誰かは理解しました。けれど、それで母さんが母親でなくなる理由が分かりません」

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「血がつながっていないんだぞ」

「血を与えただけで親になれるなら、ずいぶん簡単ですね」

子が顔を張らせた。

「あなた、私を責めるつもり? 私は若かったのよ。仕事を諦めたくなかったし、事があったの」

、僕の誕を覚えていましたか」

「もちろんよ」

「では、僕が何歳のに肺炎で入院したかっていますか。初めて歩いたのはいつですか。でいじめられた、僕が母さんにだけ打ちけた所をっていますか」

子は答えられなかった。

「僕がアメリカへ、空港で母さんに何を頼んだかっていますか」

「そんな昔の細かいことまで……」

「母親ならっているという話ではありません。僕に関を持っていたなら、つくらいっているはずだと言っているんです」

子を見つめる。

「あなたは今、初めて僕のに現れた。それなのに、どうして母親の席へ座れるとうんですか」

「これからっていけばいいでしょう」

「僕が何者にもなっていないには必なかった。でも博士号を取った今なら、これからりたい。そういうことですか」

子の唇が震えた。

は話を打ち切るようにを振った。

になるな。いずれ分かる。俺の会社を継げば、おの研究にも資せる。子の美容事業もを考えている。

の学歴と語学力があれば、族全員にとって利益になるんだ」

その言葉で、の表から最の迷いが消えた。

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