"博士になった息子を「返せ」と言われた夜" 第2話
くえられた爪と、濃すぎるほどのが目についた。
女はひよりを見ると、元にい笑みを浮かべた。
「あなたが、ひよりさん?」
初対面のはずなのに、その調にはひよりをっているような馴れ馴れしさがあった。
「正さん、こちらの方は?」
正は答えず、靴を脱いで居へ向かった。女も当然のようにそのへ続いた。
嫌な予が、たいのようにひよりの背を流れた。
正は親戚たちのにつと、グラスをに取った。
「皆さん、し聞いてもらいたいことがある」
笑い声が止まり、線が集まる。
「今はのを祝うだ。だからこそ、以伏せてきた真実をらかにしたい」
正は女の腰へを回した。
「こちらは佐々子。私がしてきた女性だ」
親戚のにざわめきが広がった。
ひよりは夫の顔を見つめたが、正は目をわせなかった。代わりに子が歩へて、へ慈しむような笑みを向けた。
「そして。私は、あなたを産んだ母親なの」
誰かが取り落としたグラスが、で割れた。
はじろぎもせず、子を見つめていた。
「何を言っているんですか」
「あなたは、私と正さんのにまれた子なのよ」
子はバッグから古い封筒をした。から取りしたのは、若い頃の正と子が並ぶ写真、病院の記録、そして親子関係を証するという古い鑑定だった。
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正は、ひよりが守り続けた族を、まるで余興の種かしでもするような調で壊した。
「つまり、ひより。おは何もらずに、俺ととの子を育てていたんだよ」
ひよりには、正の言葉がくから聞こえているようにじられた。
壁の計はいている。鍋のではにかけた吸い物が静かに煮っている。々も目のにいる。それなのに、自分だけが現実から切りされたようだった。
「が……あなたたちの子?」
ようやく絞りした声は震えていた。
「そうよ」
子は躊躇なく答えた。
「若い頃の私には、自分のを持つというがあったの。産でを諦めるつもりはなかった。でも正さんは、子どもを捨てることには反対した」
「それで、私に育てさせたのですか」
「あなたは子どもを欲しがっていたでしょう。お互いに都が良かったのよ」
子の言葉に、親戚の何かが顔をしかめた。しかし正は子を止めるどころか、当然のことを説するようにうなずいた。
「俺も会社をちげたばかりで、赤ん坊の世話をする余裕はなかった。おは子どもを産めないことを気にしていたし、ちょうどよかったんだ」
ちょうどよかった。
その言で、ひよりのが具に変えられた。
が百咳にかかり、呼吸のたびにさな胸をさせた夜。
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医師から状態が急変する能性を告げられ、病の子でほとんど眠らなかった。
幼稚園へき始めたが、母親かられられずので泣いた朝。ひよりも泣きたい気持ちを抑え、笑ってを振った。
学の自由研究がうまくいかず、で夜遅くまで模造を作り直したこともあった。受験の格発表のには、以に緊張して、掲示板の番号が見つからなかった。
留学費用がりないと分かった、ひよりは父から譲り受けた真珠の指輪を売った。には、古くなったから処分したとだけ伝えた。
そのつつを、正と子は「都が良かった」の言で片づけようとしている。
「今まで黙っていたのは、どうして?」
ひよりが尋ねると、子は肩をすくめた。
「さい子はがかかるもの。夜泣きもするし、病気にもなる。私にはも仕事もあった。でも、もうは派なでしょう?」
その目が博士号記へ向けられた。
「将来も約束されている。そろそろ本当の族に戻ってもらおうとったの」
ひよりので、しみとは別のがまれた。
この女は、をしているのではない。博士号を取得し、将来を期待される青になったから取り戻しに来ただけなのだ。
「は品物ではありません」
「そんなこと分かっているわ」
「分かっていたら、返してもらうなんて言えないはずです」
子の笑顔がわずかに歪んだ。