"千五百円の仕送りと暴かれた嘘" 第13話
「リリカには何て言ったの? あの子、話で何か言いたげだったわよ」 「あいつには……『自分から留学したいと言いしたんだから、向こうでは甘えるな。自した活を送れ』と言い含めて……母親には絶対に余計な配をかけるなと止めしていたんだ……」
登美の脳裏に、リリカのあのと、スクランブルエッグの写真が蘇った。 「あの子に、もう度詳しく聞いたのよ。毎千百円しかないことをどうして相談しなかったのかって。そうしたら、あなたが『女は卵個からでも庭を支えられるようになれ』って言ったんですってね?」 直太は返す言葉もなく、ただたださく震えるばかりだった。
「本当にすまない! 俺が愚かだった! だが……あんなに誰かを好きになったのは、で初めてだったんだよ……!」 最の最に、けない顔で自己弁護の言葉をにした直太に対し、登美は底からの嫌悪を覚えた。 自分を劇の主公に仕てげ、に訴えようとするその浅ましさ。 に厳しく、自分にはどこまでも甘い。族の活も尊厳も守ることのできない、ペラペラの張り子の虎。これが、自分が連れ添ってきた夫の真の姿だったのだ。
登美はエプロンのポケットから、あらかじめ役所で受け取り、自分の欄を完璧に記入し、実印まで捺印してあった緑の用を取りした。
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婚届である。
登美はそれを、座する直太ののすぐ横のフローリングに、ピシャリと叩きつけた。 「サインしなさい」
直太はに額をつけたまま、目を見いて用を見つめた。 「お、おい……嘘だろ? 待ってくれ……嘘だよな!? 頼む、冗談だと言ってくれ!」 「冗談なら、もうし気の利いた面いことを言うわよ」 登美は然と言い放った。 「夫として貞を働いた点で論だけど、自分の娘の活費を盗み取って飢えさせた点で、あなたは父親としても完全に失格よ。として、これ以ないほど軽蔑すべきだわ。あなたのような男と、秒たりとも同じ空気を吸いたくないの」
「待ってくれよ! いくら何でも、いきなり婚なんてあんまりじゃないか!」 直太は膝ちになり、登美のスカートに縋り付こうとした。登美は嫌悪をわにして歩退く。 「ただの気の迷いだったんだ! ほんの魔が差しただけなんだよ! 彼女とは今すぐを切る! も何とかして返すから、やり直させてくれ!」
見苦しく懇願する直太に対し、登美はポケットからスマートフォンを取りし、その画面を夫の目のに突きつけた。 「あなたがこれまでペラペラと喋った懺悔のすべて、綺麗に録音させてもらったわ」 「なっ……!」 「撮れは分よ。これ以見苦しい言い訳を続けるなら、この音声データと探偵の報告を、番であなたの会社の事部と役員会に直接届けるけれど、どうかしら? 企業のエリート部が、部の卒女子と倫し、娘の仕送りを横領して豪遊していたなんてれたら……あなたのその好きな『社会位』がどうなるか、言わなくても分かるわよね?」
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直太の顔から、完全に気が失われた。 会社での位。それこそが、この男ののすべてであり、最の砦だったのだ。族を犠牲にしても、それだけは絶対に失うわけにはいかなかった。 登美が本気であること、そして自分にはもう筋の逃げも残されていないことを、直太はようやく悟った。
「……ペンを、貸してくれないか」 直太は力なく、掠れた声で呟いた。 登美はたい笑みを浮かべ、バッグから本のペンを取りした。 「あら、お得のあのペンがあるじゃないの。ほら、これを使いなさい」
差しされたのは、あの資系融関のロゴマークが入った、黒とのボールペンだった。 直太はそのペンを受け取ると、激しく震えるで婚届の夫の欄に名と、本籍をき殴った。署名を終えた瞬、直太は発狂したように叫んだ。
「なんだ、こんなもの……! こんなものォッ!」 直太はそのペンを、リビングの壁に向かって全力で投げつけた。プラスチックと属が砕ける甲い音が内に虚しく響き渡り、インクの芯がに転がった。
登美は乱れたペンを拾いげることもせず、完成した婚届を丁寧に拾いげると、クリアファイルに収めた。