"千五百円の仕送りと暴かれた嘘" 第7話
「え……?」 リリカが信じられないといった様子で顔をげた。登美もまた、を疑って夫を凝した。 「お父さん……今、いいって……?」 「ああ」 直太は腕を組み、殊勝な父親のような落ち着いた声で頷いた。 「広い世界を見てくるのも、においては切なことだ。若い頃の苦労は買ってでもしろと言うからな。きなさい」
登美は完全に拍子抜けしてしまい、言葉を失った。 あの頑迷で、娘への支を円単位で渋ってきた男が、数百万円規模の留学費用をにして、なぜこれほどあっさりと首を縦に振ったのか。 しかし、そのの登美には、夫の真を疑う余裕などなかった。何よりも、娘ののが叶うのだ。直太の気が変わらないうちに、刻もく続きをめなければならないという焦燥が、違を覆い隠してしまったのである。
「ありがとう、お父さん!」 リリカはちがり、々とをげた。その横顔には、これまでの抑圧の々が嘘のような、眩いばかりの希望のが宿っていた。
それからの々は、涛のような忙しさで過ぎっていった。 提携する留学エージェントとのやり取り、ビザの発続き、現の受け入れやホストファミリーの選定、予防接種や健康診断。登美はスーパーのパートのを縫って、類のと格闘し続けた。 直太も珍しく協力で、必類への署名や捺印を滞りなくい、費用の面についても「俺の方で会社の制度や融資、貯蓄をやり繰りして配する。
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おは現の活費用の送座だけ準備しておけ」と主導権を握った。
そして数ヶ、成田空港の国際線発ロビーで、登美はきなスーツケースを引くリリカの背を見送った。 「お母さん、ってきます! 懸命勉して、絶対に成して帰ってくるからね!」 「体にだけは気をつけるのよ。ご飯をしっかりべて、無理をしちゃダメよ」 保検査のゲートをくぐる直、リリカは何度も振り返ってを振った。その姿が見えなくなるまで見送りながら、登美は胸いっぱいに広がる誇らしさと寂しさに、目をくしていた。
だが――リリカが本を発ったから、登美の常に、奇妙で穏なが差し込み始めていた。
それは、毎の郵便受けのにあった。 それまで度も見かけたことのなかった、証券会社や資系命保険会社、信託などからの分い封が、週に何度も直太宛てに届くようになったのである。それらはらかに般なチラシのポスティングではなく、契約者や見込み客に対して個別に送られてくる専な案内状や資産運用の報告のように見えた。
「直太さん、これ……最よく届くけれど、何かの投資でも始めたの?」 ある夜、リビングで郵便物の束を仕分けしながら、登美はそのの通を夫に差しした。
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直太はテレビの画面から線をさず、元の郵便物を乱暴にひったくると、を確かめもせずにそのままゴミ箱へ投げ捨てた。 「こういうのは、儲けに汚い連が当たり次第に配っているダイレクトメールだ。気にするな、ただの迷惑メールと同じだ」
普通なら、「ああ、そうなのか」と納得して終わる話だったかもしれない。 しかし、登美の目は見逃さなかった。 直太が普段、仕事用のシステム帳に挟んで肌さず使っている黒との級なボールペン。そのクリップの脇に、今しがたゴミ箱に放り込まれた封筒の差である、あの資系融関の独特なロゴマークが、くっきりと刻印されていたのである。
(あのボールペン……あの融関のノベルティよね……?) ただの迷惑ダイレクトメールの相が、なぜあんな価な記品の帳用ペンを夫に渡しているのか。 登美の胸の奥くに、さな、だが決して無できないたい棘がチクリと突き刺さった。
穏な予を抱えながらも、々の活は容赦なく過ぎていった。 登美はスーパーのパートを週に増やし、リリカのための計を支えることに没していた。直太の帳のペンのことも、いつしか々の忙しさの波に押し流されかけていた。
そんなあるの午、郵便受けのに、待ちに待った通のエアメールが入っていたのである。