"千五百円の仕送りと暴かれた嘘" 第2話
「私は庭というものは、社会の荒波から族を守るための堅固なでなければならないと考えています。派な活は好みません。堅実に、実直に歩むことこそが男の務めです」 その言葉を聞いたとき、登美は議なを覚えた。幼い頃から見てきた父の姿と、直太の輪郭がなりって見えたのだ。どこか古で、堅物だが、誠実で頼りがいがある。そんな直太に好を抱いた自分自に、登美は「ああ、私もやっぱり、あの厳格な父の血を引いた子供なのだな」と苦笑交じりに納得した。
トントン拍子に話はみ、両の祝福を受けながら、は華美すぎない式を挙げて結婚した。 順満帆な、互いを尊しう温かな結婚活が始まるのだと、登美はその、疑いもせずに信じ込んでいたのである。
結婚活の歯が狂い始めたのは、登美の妊娠が判した直のことだった。 職員で悪阻に耐えながらも、産休と育休の続きをどのようにめるか教と相談していた登美に対し、帰宅した直太はたい声で言い放ったのである。
「仕事は辞めてもらう。、退職届をしてきなさい」 リビングのソファで聞を広げたまま、直太は顔もげずにそう告げた。 登美は湯呑みを乗せたお盆を持ったまま、呆然と夫を見つめた。 「え……? 辞めるって、どうして? 学側も産休と育休の取得を認めてくれているし、復帰も母や民のサポートを頼めば分に両できるわ。
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私、この仕事に誇りを持っているの」 直太は聞をバサリと几帳面に折り畳むと、ガラスのような無質な線を登美に向けた。 「がにのを履く母親など必ない。子供の操教育をに丸投げするなど言語断だ。母親がにいて、常に子供と夫のために万全の体制をえておくのが本来の庭の姿だ。それに、俺の稼ぎだけで活には何つ自由しない。おがで銭を稼ぐ必などどこにもないんだ」
登美にとって、それは青の霹靂であり、痛の誤算だった。 教師という職務は、登美のアイデンティティそのものだった。しかし、直太は登美の反論に切を貸そうとしなかった。登美の実の父にまで根回しをし、「庭に専させるのが筋だ」と父を方につけてしまったのである。父からも「夫の向に従うのが妻の役目だ」と諭され、登美は方塞がりとなった。 これからまれてくるが子のことを最優先に考えれば、ここで庭内に決定な対をむわけにはいかない。登美は涙を呑んで職員に別れを告げ、半ば夫の命令に屈する形で教壇をり、専業主婦のへと入ったのだった。
やがて、陣痛の苦しみを乗り越え、産院のベッドので待望の第子が産声をげた。 元気な女の子だった。リリカと名付けられたそのさな命を抱きげたとき、あの厳格を絵に描いたような登美の父が、病に駆けつけるなり顔をくしゃくしゃにして涙を流した。
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「おお……よく無事にまれてくれた。いなあ、登美のさい頃にそっくりだ」 かつて登美を度も抱きしめて褒めることすらしなかった頑固徹な父が、目尻をげてデレデレと孫をあやす姿に、登美も母も胸を打たれ、病は温かなびに包まれた。
しかし――その幸福な輪のすぐ側で、直太だけがえ切った表で腕を組んでいた。 直太の元は固くへの字に結ばれ、眉にはい縦皺が刻まれていた。直太は、跡取りとなる男の子を異常なまでに望していたのだ。企業の世として、将来は自分の母である名学へませ、流企業に送り込むための「息子」という駒を欲していたのである。
両親が病にいるこそ、直太は引き攣った笑いを浮かべて「ありがとうございます」とをげていたが、両親が帰宅し、病に夫婦きりになった瞬、その態度は骨に豹変した。 「……チッ、女かよ」 ベッドの脇にった直太は、保育器のの赤ん坊を瞥しただけで、吐き捨てるように呟いた。 「直太さん……? 何言ってるの、あんなに元気にまれてきてくれたのに……」 「男なら、俺の跡を継がせるためにいくらでもをかけてやる気だった。