"頬を打たれた契約社員の正体" 第2話
びしりとしたスーツに隙のない化粧。キラにとって部とは数字を作るための具だった。成果をすものだけがで、それ以は靴のに敷く消耗品に過ぎない。彼女の目が入りのを捉えた。からまで値踏みするように往復する。古びた作業着、シミだらけの、曲がった腰。その瞬でキラのでは「使えない粗ごみ」に分類された。
「ちょっとそこの。」
キラはの席までツカツカと歩み寄った。
「あなた、パソコンはまさか使えないなんて言わないわよね。まあいいわ。じゃあそこのダンボール全部シュレッターにかけて、あとフロアのゴミ捨て。それくらいはできるでしょう。」
は静かにちがった。
「承しました。」
腹はたなかった。雑用も仕事のうちだ。そうっていダンボールを黙って運び、フロアのゴミを丁寧に集めた。だがその見てくれを見てキラはで笑った。
「やだ、遅い。あのね、うちは老ホームじゃないの。ついていけないならから来なくていいのよ。分かった?」
くの席でそれを聞いていたの若がはっと顔をげた。朝野実里、入社目の女性社員だった。
「あの、部、私がいていますからしお伝いします。」
キラの線がたく朝野を射抜いた。
「朝野さん、あなた今の数字から番目よね。
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の配してる暇があるの?」
朝野は言葉をみ込み、俯いた。それでもキラに見えないところでそっとにペットボトルのお茶を差しした。
「あの、よかったら無理しないでくださいね。」
さな声だった。それでもこの会社に来てに向けられた初めてののぬくもりだった。はシワの寄った目元をわずかにらげた。
「ありがとう、お嬢さん。」
——
それからもは次々と雑用を言いつけられた。コピー、備品の補充、会議の掃除。若なら分で済ませる仕事をわざと難しく指示され、できなければまた嫌を言われる。はその全てを黙って、しかも丁寧にこなした。雑用をしながら彼はこの部署を静かに観察していた。夜までかりの消えないフロア、怯えた顔でキラの顔を伺う若たち。誰かがしでもミスをするとフロアに響くキラのい叱責。そして机の島の隅にいくつも並んだ空席。にはそれが何をするのかすぐに分かった。耐え切れずに辞めていった若者たちの抜けた穴だ。は嘘ではなかった。この会社は内側から静かに腐りかけていた。
夕方、が資料を片付けていると、隣で朝野がはるか肩を震わせていた。
「丈夫かね、お嬢さん。」 「すみません、お見苦しいところを……。」
朝野は慌てて涙を拭いた。
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聞けば彼女の同僚はもう半分くが辞めたという。残ったものも皆をすり減らしていた。
「私、この会社に入るのだったんです。学の、創業者の本を読んで、を事にする温かい会社だって……でも今はその言葉に……。」
の胸が締めつけられた。自分が本にいた理はいつのにか跡形もなく消えていた。
「そうか、辛いいをさせているな。」
はわずそうつぶやいた。まるでこの会社の全ての責任が自分にあるかのように。朝野は議そうにその老を見た。ただののはずのがなぜこんなにもしそうな顔をするのだろうと。そのいやり取りをキラは苦々しく見ていた。だがはそれ以何も言わなかった。ただ朝野の疲れきった横顔を静かに見ていた。若いものがこうして隠れてに優しくしなければならない。そんな職にいつのになってしまったのか。の胸にい痛みがった。この会社をこんなにしてしまったのはにつものの責任だ。そしてその頂点にかつて自分がいたのだ。
——
翌週の曜の朝だった。キラがきなダンボール箱をつ、の机の脇にどさりと積みげた。には分いの資料がぎっしりと詰まっている。
「これね、分の取引先データ、全部Excelに入力してちょうだい。
今に。」
フロアの線が集まった。分の資料をで、しかもに。それは若が係りでも週はかかる量だった。