"爪の綺麗な中卒娘、奇跡を起こす" 第10話
「学歴と、これまでの経歴を教えていただけますか」 「……卒です。これまでの職歴はコンビニや清掃などのアルバイトのみで、設計に関する専な経験は切ありません」
会議に、再びい沈黙の底が抜けたようない静寂が落ちた。黒田の部が、目のの若い女性の顔と、元の完璧すぎる設計の数値を交互に見比べ、混乱したように瞬きを繰り返した。しかし、黒田自は驚いた様子すら見せず、ただじっと凜の目を観察するように見つめていた。
その静寂の空気を切り裂いたのは、ならぬ誠郎だった。 「……学歴や過の肩が、のすべての能力を決定するわけではありません」 く、しかし確固たる志を宿した声だった。黒田の線が、再びゆっくりと誠郎の顔へと戻る。 「このは、いつの代も、そういう社会の枠からはみたたちの臭い執に支えられてきました。この設計も、まさにそのつの結晶です」
黒田はもう度、自分の元にある設計へと線を落とした。そして、隣の部にく打ちすると、は席をち、会議をて隣の部へと引っ込んでいった。 ガチャンとドアが閉まり、会議に残されたのは誠郎、田所、松永、そして凜のだけだった。誰もをこうとしなかった。田所は固く組んだ自分の膝のを見つめ、松永は井の染みをずっと眺めている。
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凜はただ、背筋をピンと伸ばして正面の壁点を見つめていた。
分ほどのが経過した、ドアがき、黒田が再びで戻ってきた。席につき、まっすぐに誠郎の目を据えると、彼はく、しかしはっきりとこう言った。 「……この設計で、正式に契約をさせてください」
ガタッと、松永が子を引いてちがりかけた。テーブルのには正式な契約がスライドさせられ、黒田が万を取りして力くサインをき込んだ。それに続くように、誠郎も自分の名と捺印を押しめた。ペン先がのをるシャリシャリというさな音が、まるでこの川精の運命の歯がきく逆転して回りす音のように、全員の胸に響いた。 「川さん……いや、ここは素らしい材を持たれましたね。見事な仕事だ」 黒田はそれだけ言い残すと、部を連れてに会議をっていった。
そのもしばらくの、会議の誰もそのからくことができなかった。 やがて、田所が子からどっしりとちがり、凜の座る席のすぐ目のまで歩いてきた。そして、彼女のにつと、そのきな体を折り曲げて、にがつきそうなほどのいお辞儀をした。 「……本当に、すまなかった」 絞りすようない声だった。「空気が読めない」だの「卒のくせに」
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だのと、散々ひどい言葉を投げつけてしまった。「あなたが誰よりも必になってこのを守ろうとしているのにも気づかず、自分の焦りばかりをぶつけてしまった。俺はこのが好きで守りたかっただけだ……だが、そのつ当たりをあなたに向けてしまった。それは、完全に俺の甘えだ」 凜は、をげ続ける田所の背を見つめた。 「……いいえ、私の方こそ、自分の実力を言葉で証できなかった私の責任です」 田所がゆっくりと顔をげた。そののふちには、耐えきれなかったい涙がうっすらとにじんでいた。
続いて、松永もガタッと子からちがり、凜の目のへと歩み寄ってきた。彼はそのでくをげた。 「週かけてチーム全員でも解けなかった壁を、あなたはわずかでぶち抜いてみせた。悔しいけれど……あなたの描いた設計は、嘘偽りのない本物だ。本当に、申し訳ありませんでした」 「ありがとうございます……!」 凜がそっとを差しすと、松永はそのを両でしっかりと力く握りしめた。どちらからも、もう言葉はてこなかった。
その様子を、誠郎は会議の隅にったまま、静かに見守っていた。田所の謝罪を見届け、松永の握を見届け、そして凜が優しく首を横に振る姿をすべて見つめていた。のいので、こので数え切れないほどの模様を見てきた。